秋には帰るという夫の言葉を信じて七年間、待ち続けた妻の物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3586)】
【読書の森 2025年1月29日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3586)
近くの和食処「梅の花」で、女房が私の誕生日祝いをしてくれました。
閑話休題、短篇集『雨月物語』(上田秋成著、円城塔現代語訳、河出文庫・古典新訳コレクション)に収められている『浅茅が宿』には、心を鷲掴みにされてしまいました。
下総の国葛飾の郡、真間の里の勝四郎は、妻・宮木を置いて、仕事のため京へ向かいます。
真間の里が戦乱の場となったため、人々はこの地から逃れていったが、宮木は、秋風が吹く頃には帰るという夫の言葉を信じて家から離れません。宮木は誰もが振り返るほどの容姿の上に気立てもしっかりした女でした。
さまざまな事情のため勝四郎が故郷に戻ったのは、七年後のことでした。
漸く再会できた二人はとめどなく話し続け、やがて一緒に床につきます。
翌朝、勝四郎が目にしたものは・・・。
上田秋成の意図からは逸れるのだろうが、夫婦とは何かということを考えさせられてしまいました。