榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

内気・口下手な人のほうが営業に向いているというのは、本当か・・・【続・リーダーのための読書論(20)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2012年10月31日号】 続・リーダーのための読書論(20)

しゃべる営業の時代は終わった

「しゃべらない営業」の技術――内気・口ベタを武器にする”省エネ型”セールス手法』(渡瀬謙著、PHPビジネス新書)は、「営業は話術と根性」という従来の概念に真っ向から立ち向かった本であるが、その語り口は至って物静かである。

「よくしゃべる人」「明るくてユーモアがある人」「積極的な人」「社交的で誰とでもすぐに仲良くなれる人」「押しの強い人」「神経が図太い人」が営業の世界で幅を利かした時代は去ったと言い切っている。時代は「しゃべらない営業」を求めていると言うのだ。かと言って、ただ黙っていれば営業がうまくいくのかというと、そうではなく、しゃべらないことにも技術があるのだ。

しゃべらない営業のポイント

「しゃべらない営業」の基本スタイルとして、①ムダなことをしゃべらないこと、②相手にしゃべってもらうこと、③言葉ではなくツールで説得すること――の3つが挙げられている。

「ムダなことはしゃべるな」について、「自分は憶えてきたマニュアル通りにしゃべることで精一杯。相手がどんな気持ちで聞かされているかなど想像もしていない営業マンは、しゃべればしゃべるほど相手の心が離れていきます」と手厳しい。

「相手にしゃべってもらう」ことには、「相手の知っていることと知らないこと、そして興味のポイントを探る、いわゆるヒアリング」と、「人は自分がしゃべって相手がそれを聞いてくれるほど、心を開く」――の2つの目的がある。

沈黙を恐れるな

著者は、営業場面での「沈黙を恐れるな」と強調している。「いくら完璧に営業トークをしゃべれたとしても、売れないときは売れません。むしろ、トークすら聞いてくれないケースが多くなっています。一生懸命に憶えたのに、あまり役に立っていない。それが現実です」、一方、「営業マンが沈黙するというのは、お客さまに考える時間を与えるという効果がある」と述べている。さらに、「お客さまからの質問を引き出せるという、もうひとつの効果も」あると言うのだ。

その顧客専用の資料

自分で無理に話さなくても勝手に相手を説得してくれる。そんな資料を用意することを勧めている。その際、重要なことは、顧客に対するサーヴィス精神を発揮して、手間や時間がかかろうと、その顧客専用の資料を準備する。顧客は、自分と関係ないものには関心を持てないからだ。

私は、「情報提供」と「営業」がMR活動の両輪と考えている。ここでいう営業とは、「売上高を上げる」前に、「相手の信頼を得る」ことを意味している。