自分の結婚は全くの失敗だったと気づいた時、あなたならどうする?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3711)】
ビヨウヤナギ(写真1~4)が咲いています。「初夏の山野草展」で涼風を感じることができました(写真5~15)。
閑話休題、『小説読解入門――「ミドルマーチ」教養講義』(廣野由美子著、中公新書)に触発されて、『ミドルマーチ』(ジョージ・エリオット著、廣野由美子訳、光文社古典新訳文庫、全4巻)を手にしました。
全4巻で計1,989ページという、この19世紀のイギリスの長篇小説のテーマは、大胆に一言で言うことが許されるならば、自分の結婚は全くの失敗だったと気づいた時、あなたならどうする?――ということになるでしょう。
地方都市ミドルマーチを舞台に、人々の人生模様が展開される本作品を読み終えて、感じたことが3つあります。
第1は、時代や環境が異なるにしても、一生を共にしようという相手を選ぶことの難しさを痛感しました。
第2は、語り手の人間味溢れる語り口に親しみを覚えてしまいました。登場人物たちを公平に扱おうとしながらも、著者の好き嫌いが滲み出てしまっているからです。
第3は、著者の思い入れが一番強い登場人物は、決して美人ではないが性格のよい働き者のメアリ・ガースであると気づいてしまいました。女性作家ジョージ・エリオット自身が美人でなかったことが背景にあると睨んでいます。
裕福な地主の姪で、美しく知的な20歳前のドロシア・ブルックは、求婚する男性たちを退け、偉大な人物に献身する人生を夢見て50絡みの宗教史学者エドワード・カソーボンと結婚するが、間もなく、夫の偏狭な人間性に失望します。
ドロシアは、夫が忌み嫌う、夫の伯母の孫ウィル・ラディスローと密かに惹かれ合うが、嫉妬に駆られたカソーボンは、ドロシアがラディスローと再婚した場合は莫大な財産相続の全ての権利を失うという遺言書を残して急死します。
青年ラディスローには地位も財産もありません。果たして、紆余曲折を経てドロシアが選択した道は・・・。
ドロシアの物語と並行して、理想に燃える外科医ターシアス・リドゲイトと、市長の娘で美しいが自分本位のロザモンド・ヴィンシーの物語が描かれていきます。経済的苦境に陥り、二人の価値観の違いが露わになった結婚生活の行方からも目が離せません。
なお、先に上げたメアリ・ガースは、ロザモンドの兄フレッド・ヴィンシーから思いを寄せられています。こちらの物語がどうなるかも気になりますね。
『ミドルマーチ』は、『失われた時を求めて』(マルセル・プルースト著、鈴木道彦訳、集英社文庫、全13巻)と並び、私の愛読書の地位を獲得しました。『ミドルマーチ』という作品の存在と魅力を教えてくれた廣野由美子に心より感謝しています。