私が嵌った韓流時代劇『イ・サン』と『トンイ』の時代背景が明らかになった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3757)】
近くの和食処「梅の花」で、女房の誕生日祝いをしました(写真1~11)。我が家の庭師(女房)から、ツユクサ(写真12)が咲いているわよ、との報告あり。
閑話休題、一時、私たち夫婦は韓流時代劇に嵌り、次から次へと、かなりの数の作品を見たが、女房の一番人気は『宮廷女官 チャングムの誓い』で、シリーズの全てをDVDに録画するという打ち込みようでした。これに対し、私の気に入りは『イ・サン』と『トンイ』でした。この2作品は史実にかなり忠実に作られていることが窺われ、私の歴史好きが朝鮮史にまで拡大する契機となりました。
『トンイ』は、水賜(水汲みなど、主に雑用を担当する奴婢)という最下位の女官であったトンイが19代王・粛宗の側室(淑嬪・崔氏)にまで成り上がり、息子が21代王・英祖となるまでのサクセス・ストーリーです。こういう下層階級出身者の成功例は珍しくないのか、もし稀有な例ならば、トンイはなぜこのような幸運を招き寄せることができたのか。
『イ・サン』は、トンイの息子・21代王・英祖の孫のイ・サンが22代王・正祖となるまでの、ハラハラドキドキが止まらない波瀾万丈の物語です。イ・サンの父親は世子(王の後継者)でありながら、父・英祖によって米櫃に閉じ込められて餓死しなければならなかったのか、イ・サンが4代王・世宗と並ぶ名君と称えられるのはなぜか。
『朝鮮王朝の王と女たち――ここが一番おもしろい!』(水野俊平解説、青春文庫)が、これらの疑問にきっちりと答えてくれました。史実に基づく解説だけに、説得力があります。
その他の王や王を巡る女たちのドロドロの勢力争いについても詳細を知ることができました。
●庶子に関する差別をなくしたのは21代王・英祖だったこと、●22代王・正祖は、これまで科挙を受けられなかった身分の者でも学問を学べる「奎章閣」の設置、現実的な実学を理念とする「実学派」の創設、地方の両班の悪政を懲らしめる「暗行御使」の派遣、質素倹約するだけでなく利益を生み出すことで国を富ませるための農地改革、庶民も対象にした文学の振興など、「朝鮮のルネサンス」期を築いたこと、●王は業績によって死後の呼び名が祖・宗・君とランク付けされること、●側室のランクは8段階あったこと、●人民には両班・中人・常民・賤民という4つの身分があったこと、●両班の派閥の南人派と西人派との争い、西人派内の少論派と老論派との争いが激烈であったこと――も知ることができました。
巻末に、初代王・太祖から27代王・純宗までのそれぞれの履歴・事績がまとめられているので、李氏朝鮮王朝518年の歴史を俯瞰することができました。
本書を閉じた後、『イ・サン』と『トンイ』を再視聴したくなりました。