榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

漫画で古事記神話を知れば、神社が俄然面白くなる・・・【山椒読書論(307)】

【amazon 『開運! 神社さんぽ』 カスタマーレビュー 2013年11月12日】 山椒読書論(307)

キッパリ!――たった5分間で自分を変える方法』(上大岡トメ著、幻冬舎文庫)を読んで以来、私は上大岡トメのファンである。怠惰な自分に活を入れて、新たな自分を目指すという、その前向きな姿勢が好きなのである。もちろん、イラストレイターの本領発揮の、とぼけた味わいのイラスト(漫画)も好きだ。

その上大岡が、突然、神社に興味を抱き、著したのが、『開運! 神社さんぽ――古事記でめぐるご利益満点の旅』(上大岡トメ・ふくもの隊著、アース・スター エンターテイメント)である。

「もちろんずっと神社を取材しているからっていうのもありますが、ついその鳥居を反射的にくぐってしまう。『ここの神様は誰?』と思いながら参道をしずしずと歩き、拝殿の前で深々とお辞儀をしてパンパンと拍手(かしわで)。頭を垂れながら手を合わせる。すると鳥居の外の喧騒も、ざわざわした自分の気持ちも一瞬忘れてしまうほど心がしーんと静まり返る。願い事は腹の中にたくさん溜め込んでいるんですが、ここでは謙虚になれる。この凛とした感覚に引きつけられるんです」。私も、こういう気分を味わいたくて、その大きさや有名、無名に拘わらず、神社や寺があると、つい足を踏み入れてしまう。

「神社に祀られている神様たちは、古事記(2012年には1300周年を迎える。すごい!)に登場し、じつにおおらかで人間ぽく、親しみを持てる様相を呈している」。「どうしてここに神社があるんだろう? ここにいる神様は、どんな神様なんだろう? 答えは古事記神話のなかにあり。私流に解釈してマンガにしてみました。それを知れば、神様がより身近になるし、神社がもっと楽しくなる!」というわけだ。

上大岡と「ふくもの隊(福なものを探して、日本全国を旅している)」が、伊勢神宮、出雲大社(いずもおおやしろ)、宮崎の高千穂神社、奈良の神社、京都の神社を訪れる。

例えば、伊勢神宮の「20年ごとの式年遷宮」について、著者は、「ええっ!! 20年ですべて壊して造り替えるの!? もったいなくないの!?」という疑問を抱く。正確な理由は不明だが、建築技術を代々伝承していくためという説が興味深い。建築に携わる者が「①10~20代:見習い、青々しい、②30~40代:中堅から棟梁、③50代~:後見」という立場で、「昔は寿命が50歳くらいだから2回は携われる計算」、「このすごい技術を見て、聞いて、覚えて伝えていく」というのである。

各旅の終わりに「今すぐTRY!」というコラムがあり、これが、いかにも上大岡流で、魅力的だ。伊勢神宮の場合は、「2つの時間を大切にしよう――ひとりの静かな時間(今日は人に会わずメールもせず、読みたかった本に集中するのだ)と誰かとのにぎやかな時間、どっちも大切」となっている。

「ところが神社の取材をしていろいろ調べていくうちに、自分があまり神様や神社について知らないことに気付きました」。同じような人たちのために、本書のあちこちで神様や神社に関する知識が簡潔に説明されている(平藤喜久子監修)。

さらに、若い女性向けに、「伊勢で見つけた ふくなもの・店・宿」、「もっと知りたい! 神社さんぽ 伊勢編」、「伊勢参りまとめ」といった付録が各旅に付いているというサーヴィスぶりだ。