榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

松岡正剛は、歩く読書百科事典だ・・・【続・リーダーのための読書論(17)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2012年7月26日号】 続・リーダーのための読書論(17)

情熱的読書人間

松岡正剛(せいごう)は、編集者、書評家、著述家、研究者、教育者、プロデューサーなど、さまざまな領域で活躍しているが、私は、松岡の本質は情熱的読書人間だと考えている。

読書百科事典

松岡が成し遂げた一夜一冊の連続書評、その総計1144冊という荒業は、読書百科事典ともいうべき『松岡正剛 千夜千冊』(松岡正剛著、求龍堂、全7巻+特別巻)に結実している。

「遠くからとどく声」と題された第1巻には、『オリエント急行事件』『センセイの鞄』『李陵・弟子・名人伝』『失われた時を求めて』『コルシア書店の仲間たち』など155冊の、この著者にしか書けない、この著者特有の体験論的書評が収められている。

第2巻「猫と量子が見ている」には、『ロウソクの科学』『不思議の国のトムキンス』『ホーキング、宇宙を語る』『利己的な遺伝子』『蘭学事始』など146冊が収められている。

第3巻「脳と心の編集学校」には、『侏儒の言葉』『英語記憶術』『角川類語辞典』『脳とクオリア』『シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店』など154冊が収められている。

第4巻「神の戦争・仏法の鬼」には、『歎異抄』『徒然草』『君主論』『エセー』『ライ麦畑でつかまえて』など163冊が収められている。

第5巻「日本イデオロギーの森」には、『五輪書』『おくのほそ道』『代表的日本人』『阿部一族』『砂の器』など144冊が収められている。

第6巻「茶碗とピアノと山水屏風」には、『歌舞伎以前』『「いき」の構造』『陰翳礼讃』『フェルメール』『ちょっとピンぼけ』など180冊が収められている。

第7巻「男と女の資本主義」には、『ボヴァリー夫人』『レベッカ』『婉という女』『氷川清話』『わたしの渡世日記』など202冊が収められている。

これから本を読もうとするとき、『松岡正剛 千夜千冊』にその本の書評が掲載されているかを調べる。この本に収載されていれば、それは間違いなく読む価値がある本だ。それから、その本の書評を読む。その本の魅力を頭に入れてから読むことによって、読書がより充実するというわけである。

書籍の『松岡正剛 千夜千冊』はかなり高価なので、webで『松岡正剛の千夜千冊』を読むという方法もある。

『松岡正剛 千夜千冊』の全体像を手軽に知りたいという向きには、『ちょっと本気な千夜千冊 虎の巻――読書術免許皆伝』(松岡正剛著、求龍堂)がある。

松岡ワールド全開の書店

松岡がプロデュースした本屋「松丸本舗」が、東京駅・丸の内北口からすぐの丸善・丸の内本店の4階に店開きしている。普通の書店に慣れている者には想像もできない、独特の松岡ワールドが展開されている。

松丸本舗に行けない人には、『松岡正剛の書棚――松丸本舗の挑戦』(松岡正剛著、中央公論新社)が現場を彷彿とさせてくれる。