先ずコンパクトな本で医薬品業界の全体像を頭に入れてしまおう・・・【あなたの人生が最高に輝く時(29)】
最新情報が載っているか
未知の業界に挑戦しようとするとき、その業界の全体像を把握することが必要となるが、どの業界も変化が激しいので、最新の情報が組み込まれている書が望ましい。
3つの特長
『1秒でわかる! 医薬品業界ハンドブック』(近藤正觀著、東洋経済新報社)を薦めるのには、3つの理由がある。
第1は、非常にコンパクトで、その上、記述が簡にして要を得ているので、一気に読むことができるからである。
第2は、医薬品業界を取り巻く最新の動向が巻頭に書かれているからである。
パテント・クリフ問題、ワクチンやバイオ医薬品へのシフト、製薬企業の医師接待、オバマ医療改革が解説されている。
第3は、巻末資料が最新で、かつ充実しているからである。
海外製薬企業の再編年表と各グループの変遷図、国内製薬企業の再編年表と各グループの変遷図、国内医薬品卸の再編年表と各グループの変遷図、ならびに医薬品業界団体、MR認定センターなどのホーム・ページのURLが掲載されている。変化があまりに目まぐるしいので、長くこの業界にいる人間でも戸惑うことがあるほどだが、この年表と変遷図は頭をスッキリさせるのに役立つだろう。
簡潔かつ充実
「疾病構造の変化と期待の医薬品」の節では、分子標的薬、抗体医薬、ゲノム創薬、iPS細胞、RNAi医薬が分かり易く解説されている。
「製薬企業の一般的組織」と「製薬企業だけの特殊な担当部署」の節では、各部、各研究所などの役割が述べられている。
「先発医薬品とジェネリック医薬品の関係」の章は、かなり詳しく書き込まれている。
「薬価基準と医療用医薬品の流通」の章によって、医薬品に特有な流通形態と、その課題を学ぶことができる。
「MRとは」の章の結論、「可愛がられること――MRは、人間関係のプロでなくてはなりません。面会する相手は医師そして医療従事者です。実績をあげるためには信用が第一です。ところが信用は築くのに時間がかかり、崩れるのはあっという間なのです。ですから、『この方のお役に立ちたい』と考えるのが早道で、そのために『何を行えばお役に立てるか』を常に考えることが必要です。常日頃から、さまざまな誘いや声が掛かるなど、周囲に可愛がられる人が大成する人といえるでしょう」――には、20年に及ぶ私のMR経験を振り返って、全く同感である。
ただし、著者といささか見解が異なる点が2つある。1つは、著者が言うところの「外部宣伝受託会社」(CSO)についてである。CSO(医薬品営業・マーケティング業務受託企業)は海外で発展してきた業種であるが、日本のCSOも既に15年の実績があり、今や重要な役割を担っていると、私は考えている(CS0を立ち上げた経験を持つ私の欲目だろうか<笑>)。
もう1つは、「MRの出社は月に数日」という箇所である。各製薬企業の考え方に沿って、原則、毎日出社の企業も月に数日出社という企業もあると考えている。
分厚い入門書もいいが、先ずコンパクトなもので全体像を頭に入れてしまうというのは、効率的な方法だと思う。