100年以上生きる時代に備えるための教科書・・・【あなたの人生が最高に輝く時(77)】
100年ライフの時代
『LIFE SHIFT――100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳、東洋経済新報社)の基底には、人々が100年以上生きる可能性が高い時代が間もなくやって来るという認識が横たわっている。
長寿化の恩恵
長寿化の恩恵に最大限浴するには、どうすればいいのか。今すぐに人生の計画を修正し、行動を起こせとアドヴァイスしている。延長される将来を見通してしっかり準備すれば、長寿を厄災ではなく、恩恵にできる、長寿化は、私たちに多くの可能性と多くの時間をもたらすというのだ。「人生が長くなれば、非常に多くの胸躍る可能性が生まれる。使える時間が増えるし、生かせるチャンスも増える。追求できるアンデンティティの数も増える」。そして、長寿化への対応の核心は、増えた時間をどのように活用し、構成するかということだ。
3ステージからマルチステージへ
増える膨大な時間をどのように使えばいいのか、どのように人生を組み立てればいいのか。20世紀は、人生を教育→仕事→引退という3つのステージに分け、この順番でステップを踏むという考え方が定着していた。100年ライフの時代は、マルチステージの人生が可能となる。例えば、生涯に2つ、もしくは3つのキャリアを持てるようになる。先ず、金銭面を最も重視して長時間労働を行い、次は、家庭とのバランスを優先させたり、社会への貢献を軸に生活を組み立てるといったケースが考えられるだろう。マルチステージを選択すると、老いて生きる期間が単に長くなるのではなく、若々しく生きる期間が長くなるのである。
100年ライフの恩恵の一つは、余暇時間の使い方を見直し、消費とレクリエーション(娯楽)の比重を減らし、自分への投資と、新しいステージに向けた自己のリ・クリエーション(再創造)の比重を増やせることだ。
見えない資産
充実した人生を送りたければ、よく考えて計画を立て、金銭的要素と非金銭的要素、経済的要素と心理的要素、理性的要素と感情的要素のバランスを取ることが必要である。100年ライフでは、お金の問題に適切に対応することが不可欠だが、お金が最も重要な資源だと誤解してはならない。家族、友人関係、精神の健康、幸福なども極めて重要な要素だということを忘れるべきではない。
見えない資産、お金に換算できないものの重視が、本書の特徴の一つとなっている。「無形の資産は、私たちの人生のあらゆる側面できわめて大きな役割を果たしている。お金は確かに重要だが、ほとんどの人はそれ自体を目的にしていない。私たちがお金を稼ぐのは、それと交換にさまざまなものが得られるからだ。私たちはたいてい、やさしい家族、素晴らしい友人、高度なスキルと知識、肉体的・精神的な健康に恵まれた人生を『よい人生』と考える。これらはすべて無形の資産だ。長く生鮮的な人生を築くために、有形の金銭的資産と同じくらい、無形の資産も重要だということは、誰もが納得できるだろう。・・・無形の資産は、それ自体として価値があることに加えて、有形の金銭的資産の形成を助けるという点で、長く生産的な人生を送るためのカギを握る要素なのだ。よい人生を生きたければ、有形と無形の両方の資産を充実させ、両者のバランスを取り、相乗効果を生み出す必要がある」。
本書は、若い世代はもちろん、壮年層、老年層にとっても、重要な指針を与えてくれることだろう。