本を読むと、頭の中に知識のネットワークができる・・・あなたの人生が最高に輝く時(85)】
『未来のきみを変える読書術――なぜ本を読むのか?』(苫野一徳著、筑摩書房)は、若者に向けた読書の勧めである。
著者の主張は明快である。本を読むと、頭の中に知識のネットワークができる。その結果、広い視野で世界を見る目を持てるようになる。解決したい課題や、さらに理解を深めたいテーマに出会ったとき、読書経験が威力を発揮する。そして、進みたい道へ自由に歩き出せるようになるというのだ。
「読書経験を積めば積むほど、この世はまだまだ知らないことだらけ、わからないことだらけだということにも、わたしたちは否応なく気づかされるはずです」。この指摘には、大きく頷いてしまった。
著者は、物事の背景を含む知の「構造」を手に入れることの重要性を強調している。「『構造』をつかむ読書経験は、わたしたちが構造的に思考をし、表現する力もまた育んでくれます。構造的に思考をするとは、ありていに言うと、論理的に考え、表現することができるようになるということです」。
「投網漁法」から「一本釣り漁法」への転換を勧めている。「ぜひ『一本釣り漁法』をやってみてください。関心を持ったテーマや著者の本を、とにかく読みまくるのです。10冊や20冊も読めば、その分野のちょっとした専門家になれるはずです」。
「人間は、すでに知っていることを手がかりに次の学習を進めていく、というのは、認知科学の基本的な知見です。雪だるま式というのは、誇張ではありません。すでに知っていることが増えれば増えるほど、知識は倍々ゲームのように増大していくのです」。
「自分の欲望や関心をあえてはっきりと宣言することで、わたしたちは、自分とはまた別の見方をする人との間に対話の可能性を開くことができるようになります。これはあくまでも、自分のこのような欲望や関心からの見方であると断るわけですから。このような対話の可能性は、さらに、さまざまな解釈や考えを持つ人同士の『共通了解』の可能性も開きます。『なるほど、あなたの関心からすれば、その解釈はたしかに妥当だと言えそうですね』とか、『また別の関心からすれば、こんな違う解釈も成り立ちますよね』とかいった具合に、相互の納得を得るための対話を重ねることができるようになるのです」。
「著者が『言いたいこと』以上のもの、もっと言えば著者が気づいていなかったことさえも、わたしたちは読み取ることだってできるのです」。
若者だけでなく、私のような年輩者にとっても学びの多い一冊である。だが、著者の勧める、読後のレジュメ(読書ノート)作りは、著者のような学者には有益だろうが、一般の読者には向かないと考える。