「戦争のつくりかた」を教えてくれる説得力ある絵本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(309)】
散策中に、楽器を手にした麗人に出会いました。足元を見ると、「残響」と名づけられています。因みに、本日の歩数は10,161でした。
閑話休題、説得力のある絵本に出会いました。『新・戦争のつくりかた』(りぼん・ぷろじぇくと文、井上ヤスミチ絵、マガジンハウス)という絵本です。
「あなたは戦争がどういうものか、知っていますか?」と始まります。
「わたしたちの国は、60年ちかくまえに、『戦争しない』と決めました。だからあなたは、戦争のためになにかをしたことがありません。 でも、国のしくみやきまりをすこしずつ変えていけば、戦争しないと決めた国も、戦争できる国になります」。
「そのあいだには、たとえば、こんなことがおこります」に続いて、いろいろなことが具体的に例示されていきます。
「わたしたちの国を守るだけだった自衛隊が、武器を持ってよその国にでかけるようになります。 世界の平和を守るため、戦争で困っている人びとを助けるため、と言って。 せめられそうだと思ったら、先にこっちからせめる、とも言うようになります」。
「戦争にことは、ほんの何人かの政府の人たちで決めていい、というきまりを作ります。 ほかの人には、『戦争することにしたよ』と言います。時間がなければ、あとで」。
「政府が、戦争するとか、戦争するかもしれない、と決めると、テレビやラジオや新聞は、政府が発表したとおりのことを言うようになります。 政府につごうのわるいことは言わない、というきまりも作ります」。
こんなことも起こります。「町のあちこちに、カメラがつけられます。いい国民ではない人を見つけるために。 わたしたちも、おたがいを見張ります。いい国民ではない人がまわりにいないかと。 だれかのことを、いい国民ではない人かも、と思ったら、おまわりさんに知らせます。 おまわりさんは、いい国民ではないかもしれない人をつかまえます」。
この他にも、いろいろなことが起こります。
「わたしたちの国の『憲法』は、『戦争しない』と決めています。 『憲法』は、政府がやるべきことと、やってはいけないことをわたしたちが決めた、国のおおもとのきまりです。 戦争したい人たちには、つごうのわるいきまりです。 そこで、『わたしたちの国は、戦争に参加できる』と、『憲法』を書きかえます」。
「さあ、これで、わたしたちの国は、戦争できる国になりました。 政府が戦争すると決めたら、あなたは、国のために命を捨てることができます。 政府が、『これは国際貢献だ』と言えば、あなたは、そのために命を捨てることができます。 戦争で人を殺すこともできます。 おとうさんやおかあさんや、学校の友だちや先生や、近所の人たちが、戦争のために死んでも、悲しむことはありません。 政府はほめてくれます。国や『国際貢献』のために、いいことをしたのですから」。
「もしあなたが、『そんなのはいやだ』と思ったら、お願いがあります。 ここに書いてあることがひとつでもおこっていると気づいたら、おとなたちに、『たいへんだよ、なんとかしようよ』と言ってください。 おとなは、『いそがしい』とか言って、こういうことになかなか気づこうとしませんから」。
「わたしたちは、未来をつくりだすことができます。戦争しない方法を、えらびとることも」と、結ばれています。
本書を読んで、「そんなのはいやだ」と思った大人も、「そんなのはいやだ」と思わない大人も、一度目を通す価値のある絵本です。