榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「たった1つの考え方」を実践するだけで、本当に仕事が劇的に変わるのか・・・【MRのための読書論(94)】

【Monthlyミクス 2013年10月号】 MRのための読書論(94)

成果を生まないスキル

あなたは、「たった1つの考え方」を実践するだけで、仕事が劇的に変わるなどという旨い話を信じることができますか?

100のスキルよりたった1つの考え方で仕事が変わる――早くて質の高い仕事をする方法』(高橋政史著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、「私は『スキルを強化すれば仕事で成功できる』『いつかこのスキルは必要になるかもしれない』と考え、まるで筋トレをするかのように、あれもこれもビジネスで使えそうなスキルやノウハウを仕入れてきました」が、「結果につながらないスキルは全部ゴミ!」ということに気づく。

たった1つの考え方

著者の結論は単純明快である。著者の「たった1つの考え方」は、「仕事も人生も『フォーカス(集中)』で決まる」ということに帰着する。「やり方」ではなく、「目的」にフォーカスせよ、仕事の目的にフォーカスし、仕事の質とスピードを上げよ、人生の目的にフォーカスし、人生の質を変えよ――というのだ。

仕事のGPS

車の運転時、全地球測位システム(GPS)を搭載したカーナビが役立つように、仕事でもGPSを搭載しようと呼びかけている。「G(Goal)=目標。どこに向かうのか」、「P(Points)=目標達成のためのポイントは何か」、「S(Steps)=どんな手順(ステップ)で実現するか」が、「仕事のGPS」である。出発点で「仕事のGPS」をセットすること、Gは理想の姿・目標を1つに、Pはゴールを実現するためのポイントを3つに絞ること、手順のSは最大10までとすること――がコツである。スティーヴ・ジョブズはコンサルティング会社やリサーチ会社を使わず、「たった1行」のシンプルな言葉から心躍らせる物語を展開したというのだ。

目標を共有する映像化

皆で目標を共有するには「映像化」が有効である。仕事のスタート時点で、仕事のゴール地点の映像、その映像を構成するゴールまでの各シーンを頭の中で思い浮かべることが「映像化」だ。具体的には、「ABCの三幕構成」で映像化することを勧めている。すなわち、「After(理想)=夢やヴィジョン。ゴールが実現した状態」、「Before(現実)=目の前にある現実の問題や課題」、「Change(変化)=現実が理想の状態に変わる」である。

なお、フォーカスするために、「一番簡単だけど、なぜか一番できないこと」は「紙に書いて守る」ことだと、著者が強調している。

報告書は紙1枚で

「報告書は紙1枚で」のメリットは、3つある――①上司や同僚の時間を奪わない、②即、取りかかれて、短い時間で仕上がり、ストレスがかからない、③思考の基本の型が身に付くようになり、言いたいことをコンパクトにまとめる力がつく。

報告書作成に当たっては、「タイミング」「上司の基準」「実況中継」が肝になる。「上司の基準」とは、予め上司と報告書の型を摺り合わせておき、上司が認めた型で、時間をかけず簡潔に作成することを意味している。

そもそも、報告書とは、「相手=上司が知りたいことを見せる」ために書くものである。上司が知りたいのは、「要は、あなた(部下)は何が言いたいの?」、「で、ポイントは何なの?」、「で、私(上司)は何をすればいいの?」なのだから、「言いたいこと=1メッセージ」、「ポイント=3ポイント」、「上司にやってもらいたいこと=1アクション」を映像化すればいいのだ。

人生もフォーカス

「1つにフォーカスする人生。プロの仕事が早くて質の高いのは、絞り込んでいるからです。プロは、1個にフォーカスし、1つのことに膨大な時間と冷めない情熱を注ぎ込んできました。・・・1つにフォーカスすること。成功者とは、『たった1つ』にフォーカスした人です。成功者は、『あなたは、何がしたいんですか?』に『1行』でこたえることができます」。