若き遊女の屈辱と絶望の日々・・・【山椒読書論(105)】
【amazon 『石の蝶』 カスタマーレビュー 2012年11月20日】
山椒読書論(105)
あなたは、今、幸せですか? それとも、ちょっぴり不幸せですか? いずれにしても、『石の蝶』(津村節子著、集英社文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)を読み終えたら、誰でも自分が恵まれていることに気づくだろう。
ともかく、これは凄まじい本である。昭和の初めの頃、飢饉と恐慌が吹き荒れた時代に、吉原で若い生命を摩り減らしていった遊女・さよ。貧困の故に品物のように売買され、閉ざされた世界から外へは一歩も出られず、一年中、一日の休みもなく客を取らされた遊女・さよ。
昭和の初めと現在とでは時代が違うと言う人がいるかもしれない。でも、そうだろうか。遊女は姿を変え、名称を変えて、現在も生き続けているのではないだろうか。
著者の津村節子という人は、なかなかの書き手で、昭和初期の遊廓、吉原の雰囲気を実に見事に、生き生きと描き出している。描写があまりにもリアルなので、つい、自分が遊女屋の番頭か客にでもなったかのような錯覚に陥ってしまうほどだ。そして、主人公のさよの境遇が他人事とは思えなくなってしまう。
この本は、特に、若い女性に読んでもらいたい。たまには、こういう本も手にしてほしい。この書は、間違いなく、あなたを変えると思う。