榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

一流MRが自らをマネジメントする方法・・・【MRのための読書論(21)】

【Monthlyミクス 2007年9月号】 MRのための読者論(21)

ドラッカーの世界

「マネジメントの父」と呼ばれるドラッカーの著作が数多く出版されているが、そのテーマはマネジメント、社会論、個人の生き方・働き方の3つに大別することができる。経営者、リーダーに向けて書かれたものがほとんどであるが、『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか』(ピーター・F・ドラッカー著、上田惇生編訳、ダイヤモンド社)は、MRにも非常に勉強になる。この本は、ドラッカーの信頼が厚い上田惇生がドラッカーと組んで、ドラッカーの膨大な著作の中から個人の生き方・働き方に関わる精髄を抜粋・編纂したものである。ということは、ドラッカーの著作10点、論文1点のエッセンスをこの一冊で一気に学ぶことができるのだ。

自分の強みを生かす方法

MRが読書に割ける時間は限られている。時間的余裕がない場合は、5つのパートのうちの「Part3 自らをマネジメントする」だけでも読んでほしい。この、たった48ページに、一流MRになるための秘訣が凝縮している

著名な経済学者、シュンペーターが経済学の傑作を書いた30歳ごろ、「あなたは、何によって記憶されたいか」と聞かれ、「ヨーロッパ一の美人を愛人にし、ヨーロッパ一の馬術家として、そして世界一の経済学者として記憶されたい」と答えたことはよく知られている。しかし、66歳の時には、同じ質問に対し、「昔とは考えが変わった。今は、一人でも多く優秀な学生を一流の経済学者に育てた教師として記憶されたい」と回答している。ドラッカーは、このエピソードを示して、「自分は何によって他人に記憶されたいかを自問する」ことを勧めている。そして、年を取るにつれて、成長に伴って、その答えが変わっていかなければならないと述べている。

次に、心躍らせ、イキイキと働くために、「自らの強みを知る」ことを勧めている――①明らかになった強みに集中せよ、②その強みをさらに伸ばせ、③専門以外の知識を軽視するな、④自らの悪癖を改めよ、⑤他人への対し方に気を使え、⑥取り組んでも成果の上がらないことはやるな、⑦弱みを改善することに時間を使うな。

その次に、「時間を管理する」ことを促している――①先ず自らの時間をどのように使っているかを知れ、②何の成果ももたらさない仕事に時間を使うな、③自由に使える時間を大きくまとめ、緊急かつ重要な仕事に集中的に充当せよ。

最後に、「最も重要なことに集中する」ことの重要性を述べている。成果を上げる人間は、最も重要なことから始め、しかも一つのことに集中する。成果を上げる人間は、多くのことをやり遂げ、しかも成果を上げなければならないことを知っている。従って、自らの時間、エネルギー、資源を、そして組織のそれらを、一つのことに集中するのだ。すなわち、①成果を期待し得なくなった過去の仕事を捨てよ、②優先順位でなく、劣後順位、すなわち取り組むべきでない仕事を決定せよ、③優先順位は、分析によってではなく、勇気を奮って決定せよ。この勇気とは、「真に意味あることは何か」、「最も重要なことは何か」という観点から、時間と仕事について、自ら意思決定する勇気を意味している。

上司の強みを生かす方法

ドラッカーは、自分の成果を上げるために、「上司の強みを生かす」ことも勧めている。「上司にどう対処するか」で悩む時は、「上司の強みを生かせ」と言うのである。なぜか。上司が昇進できなければ、部下はその上司の後ろで立ち往生するだけである。たとえ上司が無能や失敗のために更迭されても、有能な次席が後を継ぐことは少ない。外から来る者が後を継ぐ。その上、その新しい上司は息のかかった有能な若者たちを連れてくる。従って、優秀な上司、昇進の速い上司を持つことほど、部下にとって助けとなることはない。この意味で、部下と上司は運命共同体なのである。

しかも、上司の強みを生かすことは、部下自身が成果を上げる鍵となる。上司に認められ、活用されることによって、自らが信じることの実現が可能となる――①上司にへつらうことでは、上司の強みを生かせないと知れ、②上司の強みを強調し、上司が得意なことを行えるように、上司に分かる形で提案せよ。こういう部下を持った上司は幸せである。