榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

組織で昇進を目指す「ビジネス・ゲーム」の勝者になれ・・・【MRのための読書論(106)】

【Monthlyミクス 2014年10月号】 MRのための読書論(106)

働く女性のバイブル

1977年にアメリカで出版されてベストセラーとなり、日本でも企業で働く多くの女性たちのバイブルとなってきた『ビジネス・ゲーム――誰も教えてくれなかった女性の働き方』(ベティ・L・ハラガン著、福沢恵子・水野谷悦子訳、光文社知恵の森文庫)は、3つの制約を乗り越えている。

先ず、時間的制約を乗り越えている。普通のビジネス書であればたちまち内容が時代遅れになってしまうものだが、本書は全然古さを感じさせない。現在のビジネス・ゲームに使えるアドヴァイスばかりである。次に、地域的制約を超越している。ここ日本でも通用するヒントのオン・パレードだ。さらに、性別の制約も超越してしまっている。著者は、男性中心の企業組織で脇に追いやられがちな女性たちを励まそうとこの書を書いたのであるが、女性だけでなく、男性にも十分役立つ内容となっている。

ビジネスはゲーム

ビジネスはゲームだと著者は断言する。組織の中で影響力を持つ立場になりたいと思うのであれば、ビジネス・ゲームのルールを熟知しておく必要があるというのだ。ゲームの基本ルールとは何か。「ビジネスの社会では、単に誠実に務めることだけが全てではありません。集団の中でどのように働くか。このことが、あなたの仕事の内容やチャンスや昇進に密接にかかわってくるのです」。「あなたが身につけるべき能力は、自分のやっている仕事を管理職の視点で客観的に眺めてみるということです」。「多くの人が仕事は同じことの繰り返しでつまらないと不平を述べています。しかし、本当のところ、ほとんどの仕事はそうなのです。仕事に興味を持ち続けるためには長期的な目標を設定して、とにかく働き続けること。これにつきるのです」。

傍観者かプレイヤーか

著者は、どうせ企業組織で働くのならば、傍観者ではなく、昇進を目指すビジネス・ゲームに参加し、その勝者になれと励ましている。「ビジネス・ゲームとは、見ているだけではそのおもしろさは決してわかりません。参加して初めてその醍醐味がわかるというゲームです」。「どんな仕事をするにせよ、あなたはかなり長い時間を仕事のために費やさなくてはなりません。それなら、全く見返りのない観客の立場でいるよりは、スリルもチャンスもある参加者の立場になった方がずっと楽しく、意義のある人生が送れるのではないでしょうか?」。

ゲームの勝ち方

賢いプレイヤーとして昇進を勝ち取るための仕事のこなし方とはどのようなものか。「企業の中のゲームに勝ち残るためには、仕事をこなす能力以前に、状況を判断できる力、情報を収集する力が必要なのです」。「あなたが、ここでまず身につけなくてはならないのは『組織の中では、権威に向かって口答えすることなく、従順に行動しなくてはならない』ということです」。――ビジネスの社会においては明確な「罰則」はないが、「命令の鎖」の秩序を無視することは、ある役職が持っている権威と重要性を否定することを意味するというのだ。

「組織の中で目指すポジションにつくために必要な資質は、まず忍耐強さ、周到さ、そして状況を正しく見極める力です」。「『組織の中で働く』ということは、『常に周囲と競争する』ということなのです。あなたが自分の仕事に没頭すること自体は否定しませんが、それだけにとどまっていたら、いつの日か必ずそのツケが回ってきます」。――ゲームの秘訣は誰も教えてくれないが、本書には本当のことが書かれている。この本を若い時に読んでいたらなあ。

チャンスを逃すな

「失望、落胆、困惑、非力、批判などにどう対応するかを学ぶことは、人生の上で欠かせない技術なのです」。「『アサーティブ(感じのよい正当な自己主張をするさま)であること』とは『自分の欲しいものをしっかり手に入れる。ただし、相手に反感を与えずに』ということを理解することです」。「あなたは、自分に与えられたチャンスを恐れず、十分に利用する態度を貫くことがゲームに勝つ秘訣です」。――よく言われるように、幸運の女神には後ろ髪がないからである。