榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

30代前半までに、10のビジネス・スキルを身に付けてしまおう・・・【MRのための読書論(112)】

【Monthlyミクス 2015年4月号】 MRのための読書論(112)

若手MRのMR力

意欲的な若手MRからMR力を向上させるのに役立つ本を教えてほしいと依頼されるたびに、○○力といったそれぞれの能力を磨くための本は多いが、全体を網羅した書がないことを残念に思っていた。この意味で、『グロービス流 ビジネス基礎力10――27歳からのMBA』(グロービス経営大学院著、東洋経済新報社)では、30代前半までに身に付けておきたい10のビジネス・スキルが扱われているので、非常に便利である。

ビジネス・スキルの全体像

ビジネス・スキル全体の基盤となるスキルとして、論理思考力とコミュニケーション力が位置づけられている。基盤の上の二本柱の一つを構成するのが、企画・提案力を鍛える仮説構築力、情報収集力、データ・情報分析力、次の打ち手を考える力の4つである。もう一つの柱を構成するのは、ビジネス実行力を鍛えるプレゼンテーション力、周囲を巻き込む力、チームを作る力の3つである。そして、全体のエンジンの役割を果たすのが、志を育てる力だ。このように全体像を把握した上で学習に取り組むと、計画的にレヴェルの向上を図ることができ、道半ばで挫折することを避けられる。

コミュニケーション力の鍛え方

MRにとって一番重要なスキルはコミュニケーション力だというのが、大方のMRの共通認識だろう。

コミュニケーション力のポイントとして、●相手との関係性を理解する、●結論を最初に言い切る、●結論を一言にまとめる、●結論を支える枠組みを考える、●具体的に語る――の5つが挙げられている。

「相手には、相手の世界がある」のだから、「相手との関係性を理解する」には、「情報×解釈力×価値観」という観点で自分と相手との差を理解する必要がある。コミュニケーションを図る相手に対しては、日頃から情報格差、解釈力格差、価値観格差を可能な限りなくしておくことで、スムーズなコミュニケーションを促進することができるというのだ。

「結論を最初に言い切る」とは、伝えたいメッセージを最初に言ってしまうことだが、これはコミュニケーションにおいて是非とも押さえておきたい重要原則である。

相手に伝えたいメッセージが何なのか、自分の頭の中で明確になっていないようでは相手に伝わるはずがない。事前にコミュニケーション場面を想像しながら、伝えたいメッセージを紙に書いて確認しておくこと、すなわち、「結論を一言にまとめる」作業を、著者が勧めている。MR時代の私は、面談予定のそれぞれのドクター毎にメッセージを箇条書きにしたものを自分用とドクターに渡す分の2枚、準備していたものだが、この方法は実に有効であった。

「結論を支える枠組みを考える」では、2つのコツが紹介されている。1つは、既存のビジネス・フレームワークーー3C、4P、5つの力、「課題」「原因」「解決策」、「空」「雨」「傘」、「緊急性」「重要性」、「Can」「Want」「Should」など――を活用すること、もう1つは、「相手の立場で考えてみる」ことである。後者については、相手の立場で考えた枠組みを構成することにより、相手にとって説得力のあるメッセージになるというのだ。

「具体的に語る」ポイントは、「数字で語る」と「ストーリーで語る」の2つである。後者は、相手にとって情景がイメージできるような話を添えよということだ。

志を育てる力の鍛え方

先ず、「志とは何かを理解する」よう勧めている。著者は「志」を「一定の期間、人生をかけてコミットできるようなこと(目標)」と定義している。次いで、「志の重要性を理解する」、「志の醸成パターンを理解する」へと進む。ここで、志のサイクルとスパイラル・アップのイメージーー「達成への取り組み→取り組みの終焉→客観視→自問自答→新たな目標設定→達成への取り組み・・・」が示される。そして、「志の成長の方向性を認識する」に至り、自律性の軸と社会性の軸――自分自身のため、自分の身近な周辺のため、組織全体のため、国・社会全体のため――を考慮して志を育てていくようアドヴァイスしている。