榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

リーダーは、会話力、集中力、人材発掘力を磨け・・・【続・リーダーのための読書論(94)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年1月6日号】 続・リーダーのための読書論(94)

ハーバード・ビジネス・レビュー

経営者の教科書――ハーバード・ビジネス・レビューCEO論文ベスト12』(ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部訳、ダイヤモンド社)には、第一線の研究者の手になる経営幹部向けの12の論文が収められている。

とりわけ興味深いのは、「会話力が俊敏な組織をつくる」、「リーダーは集中力を操る」、「人材は潜在能力で見極める」の3つの章だ。

会話力

社員とのコミュニケーションを深めるには、4つの段階がある。①親密性=親しい関係をつくる、②双方向性=対話を促進する、③包括性=社員の役割を拡大する、④意図性=重点課題を追求する。

具体的には、①については、信頼を獲得する、傾聴する、個人として関わることが、②については、トップが率先して行うことが、③については、優れた社員の知的能力を業界の専門家や顧客の目の前で披露させることが、④については、イベントで交流と統合を仕掛けること――が有効と説明されている。

集中力

リーダーに要求される3つの集中とは、●自分への集中(自分を見つめる)、●他者への集中(他者に関心を集中する)、●外界への集中(外界に広く関心を向ける)――を意味している。

「リーダーは、じっくり内省して建設的な姿勢で他者に関心を集中することで、EQ(心の知能指数)の柱を成す能力を培えるだろう。視野を広げてそこに関心を集中する方法を理解すると、戦略立案、イノベーション、組織マネジメントの手腕が高まるはずである。リーダーは、自分、他者、外界への集中力をうまく調和させつつ十分に育む必要がある。なぜなら、自分を見つめないと指針を示せず、他者に十分な関心を払わないと愚かな振る舞いをしてしまい、外界を注視していないと不意打ちに遭いかねないのだ」。

「集中力のあるリーダーとは、自分の注意力すべてを思いのままに操れる人である。自分の内なる感情に耳を傾け、衝動を抑え、他人からどう見られているかに気づき、他人が自分に何を求めているかを理解し、注意散漫を避けながら、先入観を排して自由に幅広く関心を持つのだ」。

なお、他者への共感は、3つに分けることができる。●認知的共感=他者の視点を理解する力、●情動的共感=他者の感情を汲み取る力、●共感的関心=相手が自分に何を求めているかを察知する力。

人材発掘力

その人物の潜在能力を見抜く指標として、4つが挙げられている。●好奇心=新しい経験や知識を追い求め、率直な批判を聞きたがる。何かを学び、自分を変えることに積極的、●洞察力=情報を集めて意味を読み取り、新たな可能性を見つける能力、●愛着心=感情と理論を駆使して説得力のあるビジョンを伝え、人々と関係を築くコツを知っている、●意志力=困難にもめげず高い目標を達成するために戦い、逆境を跳ね返す気力。

デキる社員の転職を防ぐために、その社員に4つのTについての自治権を与えようと呼びかけている。●タスク(何をするか)、●タイム(いつするか)、●チーム(誰と一緒にするか)、●テクニック(いかにそれをするか)。