『ファウスト』は、好き勝手に生きてきたゲーテの懺悔の書ではないか――老骨・榎戸誠の蔵出し書評選(その54)・・・【あなたの人生が最高に輝く時(141)】
【僕らは本好き読書隊 2024年4月7日号】
あなたの人生が最高に輝く時(141)
●『ファウスト』(ヨーハン・ヴォルフガング・ゲーテ著、柴田翔訳、講談社文芸文庫、上・下)
『ファウスト』(ヨーハン・ヴォルフガング・ゲーテ著、柴田翔訳、講談社文芸文庫、上・下)は、好き勝手に生きてきたヨーハン・ヴォルフガング・ゲーテの懺悔の書ではないか、と私は考えている。
この作品は2つの部分で構成されている。悲劇第1部では、主人公の老ファウストは、悪魔メフィストーフェレスと契約を結び、30歳若返る。若返ったファウストは、純情無垢のグレートヒェンを誘惑し、彼女に母親を誤って毒殺させてしまうばかりでなく、嬰児殺しの罪をも犯させ、自らは彼女の兄を決闘において刺し殺してしまう。悲劇第2部では、老夫婦を死に至らしめてしまう。最終章に至り、ファウストはグレートヒェンの霊と天使たちに導かれて聖母マリアのもとへ昇天していく。
「永遠なるものにして女性的なるもの、われらを彼方へと導き行く」と、物語は結ばれている。