榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「中国で最も有名は日本人」誕生は偶然ではなく、必然であった――老骨・榎戸誠の蔵出し書評選(その78)・・・【あなたの人生が最高に輝く時(165)】

【読書の森 2024年5月1日号】 あなたの人生が最高に輝く時(165)

●『われ日本海の橋とならん――内から見た中国、外から見た日本――そして世界』(加藤嘉一著、ダイヤモンド社)

当時、北京大学の留学生であった加藤嘉一が、「中国で最も有名な日本人」になったのは、偶然ではなく、必然であった。『われ日本海の橋とならん――内から見た中国、外から見た日本――そして世界』(加藤嘉一著、ダイヤモンド社)を読むと、このことがよく分かる。

先ず、日本に閉塞感を感じていた著者は、中学時代から長距離走と英語に打ち込み、ユニークな独学で、高校2年の時にはTOEIC900点台前半というレヴェルに達し、翻訳アルバイトで家計を助けるまでになっていた。次に、高校3年の時、中国語が全くできないのに、中国政府の国費による北京大学留学に挑戦する。中国に渡った彼は、半年間の猛勉強で中国語をマスターしてしまう。そして、北京大学の超エリート学生たちと勉強漬けの日々を送っている最中に、香港のテレビ局のぶっつけ本番のインタヴューを受けることになったのだ。テーマは、極めてデリケートな「大規模な反日デモ現場に居合わせた日本人留学生」であったが、両国が置かれた状況を踏まえ、瞬時に頭の中でまとめた意見を述べる。翌日から彼の北京生活は一変する。中国メディアからの取材が殺到するようになったのである。

彼の成功事例は、ルイ・パストゥールの「チャンスは受け容れ準備ができている者にやってくる」という言葉を思い起こさせる。

著者は、「願わくは、われ太平洋の(日米の)橋とならん」と語った新渡戸稲造に倣い、日本と中国のかけ橋となることを目指して、中国で活動を続けている。「中国をめぐる7つの疑問――中国に自由はあるのか? 共産党の一党独裁は絶対なのか? 人々は民主化を求めているのか? ジャーナリズムは存在するのか? 本当に覇権主義国家なのか? 途上国なのか超大国なのか? 反日感情はどの程度なのか?」、「日中関係をよくするために知ってほしいこと」、「中国の民意はクラウド(インターネット)と公園にある」に、その思いが込められている。

「日本の若者よ、海外に出よう」という呼びかけと、その具体的な制度設計案(全ての大学生に2年間の猶予期間を設け、1年間は全国の老人介護施設で有給で働き、もう1年間を海外留学に充てる)は、なかなか説得力がある。