あなたは、定年後に輝く人か、それとも、見苦しくなる人か――老骨・榎戸誠の蔵出し書評選(その123)・・・【あなたの人生が最高に輝く時(210)】
●『定年が楽しみになる生き方』(吉越浩一郎著、WAC BUNKO)
吉越浩一郎の本はいずれも、主張が明快なので、気持ちがいい。『定年が楽しみになる生き方』(吉越浩一郎著、WAC BUNKO)も、その例に漏れず、著者の定年に対する考え方は明快かつユニークだ。
「多くの日本人が、人生の中で最も大きなウェイトを占めているのは仕事であり、仕事が人生の全てであると考えているのです。これは、私に言わせれば、大いなる勘違いです。もちろん仕事が大事なことは言うまでもありませんが、自分の人生というのは、それだけのものではありません」と考える著者は、定年後の人生を、本当の人生という意味で「本生(ほんなま)」と呼んでいる。
「会社は自分を鍛える『道場』、仕事は『ゲーム』」、「定年退職で跡形もなく消える人脈」、「社内でしか通じない『共通言語』が使えなくなる」、「『上司も部下もいない』という喜び」という言葉には、著者の長年に亘る経営責任者、そして退任後の経験が滲んでいる。
「定年後に輝く人、見苦しくなる人」は、誠に的を射ており、輝くための工夫は参考になる。
「吉越流『本生』を輝かせる10のポイント」は、具体的かつ実践的である。
①夫婦間でも、会社と同じく情報の共有化を心がけよう
②「笑い」は問題を解決する
③「歩け、歩け」と「真向法」の勧め
④人生の春夏秋冬をわきまえる
⑤人と会話ができる場所を見つける
⑥常識力を養うために本を読む
⑦8時間睡眠とヴァランスの取れた食事
⑧世の中の出来事に好奇心を持ち続ける
⑨食事会やお付き合いは、割り勘で
⑩「ピンピンコロリ」を成し遂げるため強い意志を持って生活する
「妻が私を『仕事狂』から救いだしてくれた」と感謝している著者の、「お互いに『そうだね』と言えることが楽しい」、「妻が与えてくれる『きっかけ』を無駄にしない」、「『男の品格』は女性によってつくられる」という述懐には、思わず頷いてしまう。