榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

一流MRのスピード仕事術・・・【MRのための読書論(28)】

【Monthlyミクス 2008年4月号】 MRのための読者論(28)

仕事が遅いMRと速いMR

長時間仕事をしてはいるが実績に結び付かず、いつも仕事に追われ私生活はないも同然という悲惨なMRがいる一方で、テキパキと仕事を進め、企業が求める水準以上の実績を上げ、そのうえ私生活も充実させているMRがいる。この違いはどこからくるのか。MRにとって重要な行動指針「段取り・スピード・連携」の「スピード」の差によるものだが、「スピード」を真正面から取り扱った本は意外に少ない。

仕事の締め切り設定の威力

デッドライン仕事術――すべての仕事に「締切日」を入れよ』(吉越浩一郎著、祥伝社新書)は、外資系女性下着メーカー、トリンプ・インターナショナル・ジャパンを19年連続増収増益に導いた経営トップが「スピード」に焦点を絞って著した一冊である。

この著者は残業を目の敵にしている。「時間がない、足りない」と言いながら、すぐに片づくはずの仕事にもなかなか手を付けず先送りしてダラダラと働いているのは、間に合わなければ残業すればいいと安易に考えているからだ、こういう輩に足りないのは「時間」ではなく「スピード」だと、なかなか手厳しい。著者が念頭に置いているデスク・ワークと夜討ち朝駆けが求められるMR活動を同列に扱うわけにはいかないが、この指摘にも一理ある。

仕事のスピードを上げるには、どうすればよいのか。「毎日の働く時間と、すべての仕事に自ら締め切りを設定し、それを必ず守るようにすれば仕事の効率が飛躍的に上がる」と、著者の解答は単純明快だ。「今日の仕事は○時に終わらせる」と決めて仕事に集中せよ、「なるべく早く」「来月中旬ごろ」というような曖昧な言い方は止めて、「○月○日までに仕事を完成させる」と締め切り日を決めて仕事に取り組めというのだ。仕事のアウトプットは「能力×時間×効率」で決まる。「能力」と「時間」が一定とするならば、「効率」を上げざるを得ない。「時間をかけないと仕事の質が落ちる」というのは、単なる思い込みに過ぎないと、著者の言い分は痛烈だ。

それでは、どうすれば仕事の効率を上げることができるのか。「今日やるべきこと」を明確にし、そのことだけに集中すれば、意外に手際よく片付けられる。そのコツは、朝イチからエンジン全開ですぐに仕事に取りかかることだ。また、「仕事のスピード=判断のスピード」なので、よほど重要な問題でないかぎり、あれこれ迷うよりも「えいやっ」と決めて挑戦することである。そして、その行動が失敗と気づいた時は、「君子豹変す」で速やかに中止し別の方法を選択すればよいと割り切れば、いつでも即断即決が可能となる。即断即決は仕事の効率を上げるだけでなく、私たちに仕事のやりがいを実感させてくれる。

昨今、「ワーク・ライフ・バランス」が大きなテーマとなっているが、著者は、効率よくワーク(仕事)をし、そこから生じた時間の余裕を活用してライフ(私生活)を充実させよと、大局的な観点から提唱している。

仕事が速い人の秘密

戦略的な人の超速仕事術』(西村克己著、中経出版・中経の文庫)には、仕事が速い人の戦略が簡潔に示されている。仕事が速い人は、自主的に仕事の締め切り日を前倒しし、集中できる時間を確保する→メリハリをつけて目の前の仕事に取り組む→余裕があるので、仕事をより速くこなすための工夫を怠らない→新しいアイディアを生み出したり、プロフェッショナルとして得意分野を極めることができる→このような好サイクルを続けることによって自分を成長・進化させることができる、というのだ。

いつも仕事に追われている人は、「忙しい」を連発する前に、自分の仕事のやり方を見直し改善の突破口を見つけるために、仕事の速い人のやり方をよく観察するよう勧めている。「仕事が速い人はタイム・マネジメントがうまい」「ムダ・ムラ・ムリをなくすことでスピードアップを図っている」「『捨てる技術』で付加価値の高い仕事に集中している」「その場で即断・即決・即実行している」「短時間のミーティングでこまめに情報交換している」など、学ぶべきことが多い。