榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

文章を書くのが苦手、時間がかかってしまうという人のための参考書・・・【MRのための読書論(143)】

【ミクスOnline 2017年11月15日号】 MRのための読書論(143)

実践的参考書

文章を書くのが苦手、どうしても時間がかかってしまうという人のための実践的参考書がある。『10倍速く書ける超スピード文章術』(上阪徹著、ダイヤモンド社)がそれである。

スピード

「『書くスピード』を速くすれば、必然的に仕事は速くなります。同じ内容を今より速く書ければ、それだけで、仕事の生産性は一気に上がるのです」。「仕事ができる人ほど、書くスピードが速い」。

メール、リポート、営業日報、プレゼン資料、企画書、PR記事、社内報、ブログ、メルマガ、SNSなど、「ビジネスで使うほとんどの文章では、『文才』など求められていない」。

素材

著者は、文章の中身を「素材」と呼んでいる。「『素材』を意識するだけで10倍速く書ける」。「素材を意識するとは、『どう書くか』ではなく『何を書くか』に集中するということです」。「書く内容がわかっていれば、つまり、素材が準備できていれば、速く書けるのです」。

「素材とは3つ。①独自の事実、②エピソード、③数字です。つまり、読み手に『これを伝えたい』と思う内容そのものを指すのです」。

素材文章術

「素材文章術は、大きく5つのステップで進めます。①書く目的と読者を定める、②素材を集める、③素材を組み立てる、④一気に書ききる、⑤見直す」。

目的と読者

文章の目的をはっきりさせるとき、留意すべきは、「表面上の目的」に囚われず、「真の目的」まで掘り下げる必要がある。

「読者を決める」とは、「読む人をイメージすること」だ。読者を決められないときの、とっておきの方法があるという。自分の知人の中の一人に向けて書けというのだ。

素材集め

「文章を書くことが決まった瞬間から、常にアンテナを立てている、そしてどんどん素材を集める。そうすれば、書く前に、書く内容が準備されている状態になる。だから書くことに困らず、速く書けるのです」。私自身も、アンテナを高く立てていると、素材のほうから押し寄せてくるという状態をしばしば経験している。

「目的と読者を決めて素材を探していると、ふとした瞬間に、『あ、これは文章の素材になるな』というタイミングが、何度も訪れるはずです。大事なことは、その浮かんだ素材を、漏らさず確実にキャッチすることです。単純に、ひらめきをメモするのです。すべて残らず、必ずメモしてください。あとから思い出すことはできないと思ってください。自分の記憶力は、絶対に信用してはいけません」。このことは、私も痛感している。閃いた瞬間、即座に、メモ帳であれ、広告の散らしの裏であれ、箸袋であれ、書き留めるようにしている。メモしなかった素晴らしいアイディアを思い出せず、悔しい思いを何度もしたことがあるからだ。

一気

一気に書ききるコツが紹介されている。「『●』や『★』などのマークを原稿の中に入れて、あとから調べることにして飛ばす。とにかく最後まで書き進める」。私は、書き上げてから、確認したり調べる必要がある箇所には「★」を付して、スピードを損なわないようにしている。