榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書を読んで、落合博満をますます好きになってしまった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1346)】

【amazon 『決断=実行』 カスタマーレビュー 2018年12月26日】 情熱的読書人間のないしょ話(1346)

イソギクが黄色い花をたくさん付けています。ニホンズイセンが白い花を、キズイセンが黄色い花を咲かせています。ボケの赤い花が鮮やかです。最寄り駅前の広場に仮設のスケート・リンクが設営されました。因みに、本日の歩数は11,601でした。

閑話休題、野球の世界では、成績は大したことがないのに、やけに人気のある誰それのような人物がいるが、その対極に位置するのが、落合博満です。選手としては三冠王を3回獲得、監督としては弱小チームを率いて8年間で4度のリーグ優勝、1度の日本一という抜群の実績を残しているのに、一部のファンを除いて、それほど人気が高いとは言えません。天の邪鬼の私は、そういう落合が大好きなのです。

決断=実行』(落合博満著、ダイヤモンド社)では、落合の考え方と行動が本音で語られています。野球人だけでなく、さまざまな組織で働く人にも役立つアドヴァイスが目立ちます。

「格好をつけた表現になってしまうが、選手の時も監督の時も、ただ野球という仕事に取り憑かれた。認めてもらいたいと人に取り憑かれたのではなく、ただ野球という仕事に取り憑かれた。そうすれば、何も迷うことはなかった。これをやってみたい。けれど、周りはなんと言うだろう。そんな不安は抱かなくてすむ」。

「たとえば、企業の人事にサプライズはつきものだろう。部下の間で『次はあの人で間違いない』という人材が係長になることもあれば、『まさかあの人が・・・』という場合もあるはずだ。部下からの評判が芳しくない人が係長になれば、そういう空気を察してやりにくさを感じるのかもしれない。しかし、その人も上司に認められたから係長になれたのだ。ならば、結果を残すことだけに全力を注げばいいのではないか。プロ野球のタイトルと一緒で、ある程度の結果を残せば『あの人は係長になって変わった』と、手のひらを返したようにいい評判を聞くようになるものだ」。

「どんな仕事でも、勉学でも、失敗したって命まで取られるわけじゃない。くよくよ悩むのも、決して恥ずかしいことではない。『今日は何もできなかった』と失望する日もあるだろうが、そんな日でも『一日を生きた』という経験だけは積んでいるのだ。どんな仕事でも、そのうちに経験が生きることはある。そのためにも、ただひたすら仕事に取り憑かれろ」。

「野球についてあれこれ考えることが楽しいという人間、すなわち野球オタクになることが、自分の目標に近づく大切な第一歩になるのではないかと思っている。かつて日本の社会は、クイズ番組で優勝するような、浅くても広い知識を持つ人がもてはやされた。しかし、時代の流れとともに、狭い範囲で何かひとつのことを探求している人の存在価値がクロースアップされ、彼らの活躍の場が増えている。企業でも、そうした人材が求められるようになってきたと聞く。私が定義するオタクとは『他の人が気づかないことに気づける人』だ。野球オタクこそ、自分を大成させる原動力になる」。

「好奇心を抱き、知りたいと思う対象は人それぞれなのだろうが、勝負の世界にいる以上、自分の仕事に役立つ物事については関心を持ちたい。そうして、関心のあることに対してはとことん追求したい。高い実績を残している選手の物真似だろうと、それで自分も目立つ成績を残せばいいのだ。『オマージュは認められるが、盗作は厳禁』の芸術の世界とは異なり、野球界は上手く盗んだ者が生き残る。野球の技術や戦術には、著作権はないのだから」。

「厄介なのは、大半の選手が大きな責任からの『解放感』を覚えることだ。レギュラーという立場を経験した人なら理解できると思うが、その責任の大きさは半端なものではない。成長途上や控えの時は、試合に出られない苦しさを味わう。だが、レギュラーとなれば、どんなに状態が悪くても試合に出なければならない、出るからには結果を残さなければいけないという立場が、苦しさを何倍にもする。プロでも、長くレギュラーとして活躍した選手が、世代交代などで控えにまわると、一気に老け込んでしまうことが少なくない。もちろん、年齢的な衰えもあるのだが、何より毎試合スタメン出場しなくていいという解放感を知り、体が動かなくなってしまうのだ。ベテランなら、それを潮時とユニフォームを脱げばいいのだろうが、若いうちに解放感を味わってしまうと、その先の成長はなかなか見込めない。とても不幸なことだ」。

「人間は、平坦な道と険しい山道の岐路に立てば、どうしても平坦な道を選ぼうとする。できれば楽をして生きていきたいと思うのは、決して悪いことではない。出世争いから身を引き、定年まで窓際で平穏無事に生きようとするのは、ビジネスマンとして悪いことではないと思う。私自身も、プロ入りせずに東芝府中に残っていたら、そういう穏やかな人生を歩んだかもしれない。しかし、個人事業主となり、常に勝敗に左右される世界に飛び込んでしまったから、そこで生き抜くために全力を尽くしたのだ」。

「行動を起こさないのも実行のひとつであるという考えで、次の決断、実行を前向きに考える。他人にどう思われようと関係ない。そうした決断、実行を繰り返しながら、自分の思うがままに生きていくのが、特に情報過多でスピード感のある現代を生きていくには大切なのではないだろうか」。

本書を読んで、落合をますます好きになってしまいました。