榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

組織で桁外れの実績を上げ続けている人は、いったい何をしているのか・・・【MRのための読書論(98)】

【Monthlyミクス 2014年2月号】 MRのための読書論(98)

桁外れの39歳

組織の一員として、与えられた環境のもとで、いかにしたら実績を上げ続けることができるか。『桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか』(鳩山玲人著、幻冬舎)の39歳の著者が、その具体的な方法を余すところなく明かしている。

「私は自分自身のこれまでの経験から、普通の会社員であっても、やり方しだいで、大きな結果は出せると思っています。30代を駆け抜けて40代を迎えようとしている今、私自身がどのような考え方で仕事にとり組み、チャンスをものにしながら(桁外れの)結果を出してきたのかを本書にまとめてみました」。

入念な準備

「仕事で結果を出すためには、入念な準備が必要です。『ほかの人にはできないことをやってのける人』『仕事でどんどん成果を上げていく人』というのは、実は人から見えないところで、できないことをできるようにするために、あるいはここぞという場面で望ましい対応がとれるようにするために、徹底的な準備をしているのだと思います。『結果を出す人』と『結果を出せない人』は、能力の優劣ではなく、どれだけ準備をしたかによって差がついているのだといってもいいでしょう」。組織における私の長い経験から、全く同感である。著者は、さらに、入念な準備が習慣のレヴェルまでいけば、準備は楽しく、やりがいのあるものになると述べている。

具体的には、このような方法を挙げている――●新しい会社や部署に入ったら、そこにある本と資料を全部読み込む、●人に会う前は、相手のことを徹底的に調べる、●社内のルールを覚える、●プレゼン前には、手を動かして図やキーワードを書きまくる、●スポーツと同じように、毎日トレーニングをする。

チャンスの女神

チャンスの女神には後ろ髪がない。「仕事では今やるべき目の前のことで手一杯になりがちですが、『いつか絶対に実現したい』と思う仕事があるなら、先々のことまで考えて準備しておくことが必要です。万全を尽くしてシミュレーションをしていなければ、チャンスがきたときにつかむことはできません。どんなに勝ち目が薄いと思える案件でも、『いつか絶対にものにしてやる』と思って準備しておくことが1パーセントの可能性の扉を開くことにつながるのです」。まさに、そのとおりで、チャンスの女神が微笑んでくれることは滅多にないが、ここぞと思ったときは、なり振り構わず女神の前髪を引っ掴まねばならない。たった一度のチャンスをものにできるか否かで、その後の人生が大きく変わってしまうからだ。

不安を味方に

「生きている限り不安がなくなることはありませんが、ある程度は打ち消すことができるものです。私は、いつも『自分が何に対して不安を感じているのか』『どうすればそれを打ち消せるか』を考え、できるだけ心を平穏に保てるよう努力しています。不安を打ち消すための方法として最も簡単で効果的なのは、『情報収集』と『トレーニング』です」。この著者の不安の根源には、40歳で急死した父の存在がある。著者は、「不安を軽減するために、ひたすら情報を集める」のだ。

立場が逆転

「三菱商事からエイベックスに出向したとき、私は身をもって『人間関係はいつ逆転するかわからないものだ』ということを実感しました」。著者が指摘するとおり、「立場はつねに逆転しうると心得る」必要がある。私の経験に照らしても、三共(現・第一三共)時代、イーピーエス・グループ時代を通じて、社内外の人々の栄枯盛衰を間近に見てきた。だから人生は面白いとも言えるのだが。

新人時代

著者の「私が新人の頃から徹底してきた仕事の基本」も興味深い――●コピーを頼まれたら、その書類の中身をチェックする、●どんな仕事でも、最初に目標を数値で設定する、●雑務のなかにもチャンスがあると心得る、●自分一人でできることに他人を巻き込まない、●相手の期待をつねに上回る、●失敗から貪欲に学ぶ、●無駄に思えることこそ、深く掘り下げて学んでおく。