榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「段取り・スピード・連携」がMRの基本だ・・・【MRのための読書論(27)】

【Monthlyミクス 2008年3月号】 MRのための読者論(27)

一流MRの行動指針

社内外の一流MRの行動をつぶさに観察した結果、そして、自分の行動の成功例を振り返った結果、「段取り・スピード・連携」が私の行動指針となった。これは、MRだけでなく、どのような仕事にも、また、仕事だけでなく、プライヴェットなことにも、さらに、個人だけでなく、組織にも通じる行動指針なので、常日ごろ仲間たちに励行を勧めている。

個人の仕事は「段取り八分(はちぶ)」

MR活動を決まり切った定型業務(ルーティン・ワーク)と考えるか、あるいは、明確な目標を持った期限付きのやりがいのある課題と捉えるかで、気持ちの持ち方、取り組み、成果が全く異なってくる。

絶妙な「段取り」の技術』(吉山勇樹著、明日香出版社)は、仕事を進める上での基本中の基本が段取りだ、「段取り八分」という言葉があるように、段取りがうまくいけばその仕事の80%が進行したようなものだという。

段取りは4つのステップ――「ゴール設定」「計画立案」「実行・進捗管理」「評価・仕組み化」――に分けて考えると分かり易い。「ゴール設定」に際しては、問題とは何かということが重要となる。問題とは、理想(あるべき姿)と現実(事実)とのギャップのことであり、問題が解決すべきものとして捉えられたとき、課題となるのである。次の「計画立案」は、ゴール設定に基づいた必要作業(タスク)の洗い出し→役割分担→スケジューリング→リスク洗い出しと対策立案、の順で進めていく。その次の「実行・進捗管理」では、実施→確認→実施→確認と節目ごとにチェックとレヴューを繰り返すことで大きなズレ(遅れ)を起こさないようにする。最終の仕上げ段階では、「評価」と、失敗から教訓を得て、次に繋げる「仕組み化」が欠かせない。

組織のプロジェクト成功の進行手順

企画・立案から実行計画の策定、スジュール管理まで、仕事の過程を管理する米国生まれの手法をプロジェクト・マネジメントという。

よくわかるプロジェクトマネジメント』(西村克己著、日本実業出版社)を読むと、「段取り=プロジェクト・マネジメント」であることがはっきりする。プロジェクト・マネジメントの一番重要なノウハウは3つのステップ――「ステップ1:テーマ設定と解決策の立案」「ステップ2:実行計画の立案」「ステップ3:実行と評価」――に凝縮されている。ステップ1の具体的な手順は、①解決したいテーマ・目的を決める、②現状を把握する、③基本方針・解決方針を決める、④解決策を決める。ステップ2の手順は、①作業計画とスケジュールの作成、②組織体制・役割分担の明確化、③予算の作成/投資対効果の評価、④リスク・マネジメント。ステップ3の手順は、①プロジェクトの発足と関係者への周知、②実行と進捗管理、③問題発生時の是正処置/実績評価――となっている。

また、成功するプロジェクト・リーダーの条件として、目的志向、目標達成への熱意、強靭な精神力、前向きなプラス思考、意思決定力、情報収集・分析・処理力、コミュニケーション能力が挙げられている。

一流MRの発想の転換

段取りやプロジェクト・マネジメントをそれと意識することなく実行し、素晴らしい実績を上げているMRやリーダーがいることは確かだ。しかし、これらの手法を学ぶことによって、さらに効率を上げ、スピード・アップを図り、関係者間の連携を強化することが可能となる。大局的な見地から系統立てて仕事を進めることで、やるべきことの抜けや漏れを防ぎ、かつ無駄な重複を避けることができる。「段取り・スピード・連携」を実現することができるのだ。

優れた手法・技法は確かに役に立つが、気持ちの持ち方はもっと重要である。目標達成が困難に思われる時、進行が遅れ気味の時、新たな問題やクレームが生じた時、暗い気持ちになる代わりに、これらは個人や組織が成長・進化している証しだ、自分や組織を鍛えるチャンスだと発想を転換し、勇気を奮って、前向きに仕事を進めていこう。