「浮き草人生」「面倒な人」「不思議ちゃん」、君はどのタイプかな・・・【MRのための読書論(88)】
一人かチームか
アイディアを捻り出そうとするとき、個人のスキル向上のための啓発本は大量に出版されている。一人で頑張るのもよいが、チームで取り組むと、自分では思いもつかなかったアイディアを生み出すことが可能となる。しかし、チームでアイディアを出そうとするときの恰好のテクストというのは、意外に少ない。
アイディア結実までの6段階
その点、『アイデア・イノベーション――創発を生むチーム発想術』(堀公俊・加藤彰著、日本経済新聞出版社)は、文章が簡潔で分かり易い上に、図・イラスト・写真が豊富なので、具体的な方法がどんどん頭に染み込んでくる。
本書では、アイディアのタネが結実するまでのプロセスを、「情報収集→発想→編集→試作→評価・選択」という流れで紹介している。もう少し具体的に説明すると、「①チームでアイディアを出そう!(さあ、始めよう)→②素材をインプットする(アイディアのヒントをたくさん集める)→③アイディアを発想する(アイディアをできる限り発散させる)→④アイディアを編集する(展開、結合、応用、創発を試みる)→⑤アイディアを表現する(コンセプトをカタチにする)→⑥アイディアを評価・選択する(アイディアやコンセプトを取捨選択する)」という6段階になる。
チームでアイディアを
「チームでアイディアを出そう」とするとき、自分は4つのタイプのどれかと考えることを、著者が勧めている。横軸にクリエイティヴ思考を取り、右方を強、左方を弱とする。縦軸にはロジカル思考を取り、上方を強、下方を弱とする。下の左の象限がアイディアとは縁の薄い「浮き草人生」、上の左が理屈に拘る「面倒な人」、下の右がアイディア倒れの「不思議ちゃん」、上の右がクリエイティヴ思考とロジカル思考を併せ持った「イノヴェーション人材」だというのだ。
ファシリテーターとは
チームで「アイディアを発想する」段階の手法としてブレインストーミングが有効であり、活気あるブレインストーミングにするには盛り上げ役のファシリテーター(進行役)の存在が欠かせないというのが、著者の主張である。ファシリテーターの役割は、メンバーが中身(コンテンツ)に集中できるよう、進め方(プロセス)を舵取りすることである。参加者がアイディア出しに注力できるよう、一歩引いて、ルールの運用を見守るようにする。例えば、「ほら、また批判しちゃうんだから。イエロー・カードをもう1枚!」、「もう少し発展させられそうですか? それとも切り口を変えますか?」、「これ以上出したら後が大変だと思っているんじゃありませんか。それは私が何とかしますから、安心して出してください」といった言葉を、タイミングよくかけろというのだ。 さらに、「クリエイティヴ・ファシリテーションの実践」として、ファシリテーターとメンバーA、B、Cとの言葉のやり取りの例が示されているので、大変参考になる。
アイディアの編集とは
アイディアを編集する4つの方法として、「深化させる(展開)」、「繋ぎ合わせる(結合)」、「当てはめる(応用)」、「閃く(創発)」が挙げられている。アイディア編集で一番大切なのは、「心に響くコンセプトになっているか」ということである。コンセプトとは、アイディアの核となる考え方(意図)や得られる効果(便益)を表現したものだ。「響かないものはそれ以上検討する価値がなく、やるだけ時間のムダ」と、著者は手厳しい。
遊び心を
チームでアイディアを出そうとするとき、著者が重視しているのは、クリエイティヴ思考と、それを効果的に実践するためのコラボレーションのスキルである。そして、クリエイティヴ思考には、「それも面白いかも」、「それもアリだよね」、「やってみてから考えよう」、「ダメモトでいいよ」といった「遊び心」が必要だというのだ。
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