榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

MRと報告書と「カンカラコモデケア」・・・【MRのための読書論(5)】

【Monthlyミクス 2006年5月号】 MRのための読者論(5)

呪文「カンカラコモデケア」の威力

目指すドクターに会えなかった時、何も残さずに帰るMR、名刺を置いて帰るMR、名刺に型にはまった文句を添え書きして帰るMR、名刺にドクターの心に響く一言を添え書きして帰るMR ――この微差が、やがて大差をもたらすことになる。

MRが文章を書く機会は意外に多い。各種報告書、企画書、手紙・葉書き、連絡メモ、メール等々、多岐に亘っている。故に、優れた文章カはMRの重要な武器と心得るべきである。

カンカラ作文術』(山崎宗次著、光文社。出版元品切れ〉によれば、「カンカラコモデケア」という呪文を唱えれば、インパクトのある文章が書けるようになるという。

「カン」は「感動」である。感動的な文章が書けるか否かは、題材〈内容)がよいか否かで決まってしまう。よい題材が感動を生むことを念頭に置いて、MR活動を展開しよう。

「カラ」は「カラフル」である。著者は、頭のいい人は感受性が鋭く、カラフルな文章を書く、と述べている。何かを見て美しいと感じたことを、いかにカラフルに表現するかである。カラフルといっても、色に限ったことではなく、文章の行間から音が響いてくるような、香りが漂ってくるような表現を目指すべきだ。

「コ」は「今日性」である。MRにとっての今日性とは、第一線の現在の状況を、その場に立ち会っていない人々にも臨場感豊かに伝えるということである。

「モ」は「物語性」である。一流MRの報告書は読み手をドキドキさせるものだ。困難な状況に直面したMRが、どのように立ち向かっていったのかというストーリー展開に思わず引きずり込まれてしまうからである。

「デ」は「データ」である。文章の中に数量や日時など具体的なデータを盛り込むと、文章全体が引き締まり、説得力を増す。5W(who、what、when、where、why)2H(how、how much)が参考になるだろう。

「ケ」は「決意」である。MRの報告書には、自分は今後このように取り組んでいくというダイナミックな決意表明が不可欠である。どんなに短い文章であろうと、書き手の熱い思いが伝わるような、情熱がほとばしるような企画書、報告書を書くことを心がけよう。

「ア」は「明るさ」である。明るい文章は読む人を楽しくさせる。たとえ暗い内容でも、前向きの姿勢で捉えれば、明るい文章にすることができる。リズム感のある文章、適度にユーモア、エスプリを利かせた文章を目標にしよう。

若い時代の読書量で文章の巧拙が決まる、と言われるが、全く同感である。まず読書する、そして表現を盗むのである。読書中に、真似したいと思うような表現に出会った時は、そのページの隅(その表現がページの右半分に存在する場合はページの上隅、左半分の場合はページの下隅)を折っておいて、読後、ノートに書き写す。この地道な作業を続けていくうちに、文章力がメキメキと上達してくるはずだ。

文章の達人を目指すMRの必読書

レトリック感覚』と『レトリック認識』(いずれも佐藤信夫著、講談社学術文庫)は、文章の達人を目指すMRにとって必読の書である。タイトルの「レトリック」は、効果的な言語表現の技術のことであり、説得力のある文章、魅力的な文章、読む人の心に響く文章を書く方法と言える。

『レトリック感覚』によって「直喩」、「隠喩」、「換喩」、「提喩」、「誇張法」、「列叙法」、「緩叙法」といったレトリックの知識を身に着けたMRの文章は、読み手を魅了することだろう。さらに、『レトリック認識』で「黙説あるいは中断」、「ためらい」、「転喩あるいは側写」、「対比」、「対義結合と逆説」、「諷喩」、「反語」、「暗示引用」の知識を学べば、鬼に金棒となる。