榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

科学的根拠に基づく効果的な勉強法なるものは、本当に、そんなに凄いのか・・・【MRのための読書論(230)】

【ミクスOnline 2025年2月25日号】 MRの為の読書論(230)

科学的根拠

『最高の勉強法――科学的根拠に基づく』(安川康介著、KADOKAWA)の強みは3つある。第1は、著者が勉強法を説くのにふさわしい人物であること。第2は、その勉強法が著者自身の体験に基づいていること。第3は、その勉強法が科学的根拠に裏付けられていること。

著者

著者・安川康介は、慶應義塾大学医学部卒の内科医で、米国の医師国家試験に上位1%以内という高得点で合格し、さらに、米国の内科専門医試験、感染症専門医試験、集中治療心エコー試験などに上位1~10%で合格し、現在は南フロリダ大学医学部助教の臨床医という、目を瞠る経歴の持ち主。

勉強法

最重要な勉強法として、①アクティブリコール、②分散学習の2つ、それに次ぐ勉強法として、③精緻的質問、④自己説明、⑤インターリービングの3つが挙げられている。

アクティブリコール、分散学習

アクティブリコールとは、勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと。情報を積極的に思い出すことによって、その情報が長期記憶に定着しやすくなるのだ。「情報を積極的に思い出すことで、『この情報は大切だよ!』と自分の脳に言い聞かせ長期記憶として保管してもらう、そんなイメージを僕は持っています」。

記憶から引き出す作業をより重視し、インプット中心の勉強から、アウトプットをより重視した勉強に変えることを勧めている。著者が医学の膨大な知識を覚えなければならない時に実際に使ってきた「ブツブツ呟いて他人に教えるフリをしながら書き出す白紙勉強法」が紹介されている。後で誰かに教えることを前提に勉強すると、学習内容の理解が深まり、学習効果が高まることは、私も経験済みである。

分散学習とは、時間を空けて勉強すること。時間を分散して勉強するほうが長期的記憶の定着がよいというのだ。「繰り返しその情報を入力・取り出すことで、『これは必要な情報だよ!』と脳に伝えるイメージです」。

最強の学習法は、アクティブリコール+分散学習=連続的再学習だと、著者が断言している。

精緻的質問、自己説明

精緻的質問とは、勉強した内容に対して、「なぜ、そうなっているのか(Why)?」、「どのように、そうなっているのか(How)?」などと、自分自身に質問していくこと。

自己説明とは、何かを学習している時に、学習者が自分自身に向けて、学習内容や学習過程の理解について説明すること、数学や物理などの問題を解いている時に、その問題の意図や問題解決の過程を自身に説明すること。

精緻的質問と自己説明を「僕なりに簡単にまとめるならば、『頭の中で自分と自分が質問や会話をしながら、学習していく方法』となります」。

インターリービング

インターリービングとは、似ているけれども異なった複数のスキルや勉強のトピックを交互に学習すること。

若い時に本書に出会っていたら、私の人生は大きく変わっていたかも。