銀(しろかね)も 金(くがね)も玉も 何せむに まされる宝 子にしかめやも・・・【ことばのオアシス(110)】
【薬事日報 2013年1月16日号】
ことばのオアシス(110)
銀(しろかね)も 金(くがね)も玉も 何せむに まされる宝 子にしかめやも
――山上憶良
「子等を思ふ歌」や「貧窮問答歌」で知られる万葉歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)の和歌。
下級貴族であった憶良が歌ったのは、「世の中の貧しい人たちの溜息であり、子を思う気持ちであり、老残の身の苦しさであった」(壺齊散人)。
「憶良らは 今は罷(まか)らむ 子泣くらむ 其の彼の母も 吾を待つらむそ」は、幼い子やその母が私を今か今かと待っていますので、ここらで宴会を中座させていただきたい、という歌であるが、憶良の温かい人柄が伝わってくる。
山上憶良を深く知るには、『山上憶良』(辰巳正明著、笠間書院・コレクション日本歌人選)が最適である。
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