先生、鳥取環境大学で授業を受けたい気分になっています!・・・【山椒読書論(36)】
『先生、キジがヤギに縄張り宣言しています!――[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学』(小林朋道著、築地書館)は、私が愛読している「先生!シリーズ」の第5弾であるが、今回も期待を裏切らない内容であった。
「自然豊かな小さな大学を舞台に起こる動物と人間をめぐる事件を人間動物行動学の視点で描く」との触れ込みどおり、この大学とその周辺では、生き物好きには興味深い事件(?)が、それこそ次から次へと発生するのだ。
「子どものイソギンチャクはカタツムリのように這って動くのだ!」、「フェレット失踪事件」、「テニスコートで死にそうになっていたクサガメ」、「ヤモリの恩返し?」、「小さな無人島に一人で生きるシカ、ツコとの別れ」、「先生、木の上から何かがこちらを見ています!」、「ヤギのことが気になってしかたないキジの話」といったタイトルの、著者自身と学生たちのワクワクする経験談が満載されている。
著者の教授らしからぬ軽妙な語り口も、このシリーズの魅力となっている。例えば、「ヒメネズミの子どもはヘビやイタチの糞に枯れ葉をかぶせようとする」という章では、「私のライフワークの一つは、『人間も含めた哺乳類の、ヘビに対する反応の解析』である。・・・哺乳類のなかの一グループである齧歯類では、おそらくその体の小ささゆえにヘビの餌になりやすく、それだけヘビに対して敏感に反応し、対抗手段も発達しているのではないかと推察される。・・・私は、子どものヒメネズミが、イタチやヘビの糞のニオイに対してどんな反応をするか調べたいと思ったのである。・・・しかし、かわいい子ネズミがそこで見せてくれた行動は、私にとって驚くべきものだった。なんと、子ネズミは、・・・」といった具合である。この後に実験結果が述べられているが、その最後は、「さて、現段階で公表できるのはここまでである。なかなか面白いでしょ」と結ばれている。
「そうなんです。問題はそこなんです。でもこれがちょっと難しいところなんです。私が頭をひねりひねり考えている、その『機能』の一つは次のようなことである」、「うむ、なかなか悪くない仮説である」といった調子である。
小林先生、このシリーズのせいで、「林に棲むタヌキは、時々、大学のキャンパスを歩いている。もちろん林のなかに入れば、親が、出産・子育てのときに使う巣穴や、タヌキの道、溜め糞場などがすぐに見つかる。まれにではあるが、キツネやテン、ノウサギもキャンパス内の道路を横切る」鳥取環境大学で先生の授業を受けたい気分になっています!