ものぐさで、ずぼらな週末自然観察のすすめ・・・【山椒読書論(49)】
『週末ナチュラリストのすすめ』(谷本雄治著、岩波科学ライブラリー)は、100ページちょっとしかないが、生き物好きには堪らない本だ。
その魅力は、3つに絞ることができる。
第1は、週末ナチュラリストとあるように、専門家ぶらずに、あくまで素人の生き物好きの視点に立っていることである。そうは言っても、この本で初めて知ったことが結構多い。これは、著者が根っからの生き物好きだからだろう。
例えば、「3000年に一度しか咲かないといわれる『うどんげの花』の正体は、クサカゲロウの卵だ」、「コバネガ。映画『モスラ』のモデルともいわれる原始的な蛾。ほかの蛾とちがって、大あごがある」、「カラスウリの種。大黒さまに見立て、財布に入れるとお金が増えるともいわれた」、「リンゴコブガの幼虫は、古い頭の殻をくっつけたまま。奇妙な習性? それとも悪趣味?」、「ヘクソカズラの別名は『早乙女花』。本名の『屁糞蔓』とは対照的な呼び名である」、「エサキモンキツノカメムシ。名は長いが、『ハートを背負ったカメムシ』として有名だ」、「昔は『田金魚』の名前で売られたホウネンエビ。これは卵を抱えた雌。体長約3cm」といった具合だ。
第2は、各ページの半分を占めているカラー写真が素晴らしいことである。それぞれの写真に添えられたコメントが、これまた楽しい。
「イラガの繭から出てきたイラガセイボウ。宝石のような輝きに驚かない人はいまい」、「殻に毛が生えているオオケマイマイ。長生きすると、次第に毛が薄くなるらしい」、「わが家に来たオオミズアオの顔を見た。舌を出した羊のような愛らしさだった」「葉が落ちたあとにできたクズの『葉痕』。何度見ても、何かの顔としか思えない」、「思わずパクリとくわえたものの、ナナフシのあしが長すぎて戸惑う感じのヤモリ」、「ぼくの新発見? アヤモクメキリガの幼虫は、緑のカバのように見えてしかたがない」、「葉の上であしを広げるハナグモ。ウルトラマンにも(宮崎アニメの)カオナシにも似ているような・・・」と、挙げていったら、切りがない。
第3は、周囲の生き物を「見る」から始まって、「拾う」、「撮る」、「飼う」、「知る」へと、徐々に行動範囲が広がっていくことである。
「拾う」では、整理・整頓が苦手な著者の「ものぐさ流整理法」が紹介されている。「撮る」ときは、被写体の昆虫の目にピントを合わせることがポイントだという。「飼う」場合は、著者は、百円ショップの小さな水槽を愛用している。また、2リットル・サイズのペット・ボトルも適当な箇所に切り込みを入れて活用している。