榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

海外ミステリ・冒険小説を原書で読み耽る読書大好き人間・・・【山椒読書論(132)】

【amazon 『すべては今日から』 カスタマーレビュー 2013年2月2日】 山椒読書論(132)

NHK・BSの書評番組「週刊ブックレビュー」は、長いこと、土曜朝の私の最高の楽しみであった。3名の書評ゲストをリラックスさせ、ユニークなコメントを引き出す司会の児玉清が、大の読書好きであることは、その語り口から窺われた。

ところが、今回、『すべては今日から』(児玉清著、新潮社)を繙いて、その本好きが尋常のレヴェルではないことを知り、唖然としてしまった。読みたい本が翻訳されるのを待ちきれずに、英語版の原書を購入して、次から次へと読み耽る毎日だったというのだ。

児玉が大学でドイツ語を専攻しようと決めたのは、シュテファン・ツヴァイクの『人類の星の時間』を読んだ時だと書かれている。私もツヴァイクの『ジョゼフ・フーシェ』によって、読書の本当の面白さに目覚めた人間である。同じようにツヴァイクから強烈なインパクトを受けながら、児玉は海外ミステリ・冒険小説の世界にのめり込んでいく。一方の私は、彼とは異なる分野の読書の森に分け行っていったのだから、何とも不思議なことだ。

『すべては今日から』の90%は、海外ミステリ・冒険小説への熱い思いと書評で占められている。これらの分野の愛読者には堪えられない一冊である。