榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

小売店の店長と企業の課長は、想像以上に共通点が多い・・・【山椒読書論(153)】

【amazon 『「競合店に負けない店長」がしているシンプルな習慣』 カスターレビュー 2013年3月9日】 山椒読書論(153)

全国チェーンの大手菓子店で学生アルバイトをした時、店長という仕事に興味を抱いたが、製薬企業に就職したため、この夢は果たすことができなかった。しかし、小売店の店長と企業の課長は共通点が多いのではと感じていた。今回、『競合店に負けない店長」がしているシンプルな習慣』(松下雅憲著、同文館出版)を手にして、やはりそうなんだと納得することができた。

「お客様の支持を得続けていることで、近隣の競合に負けていない店」には、「本気でお客様の立場に立っている店長(あるいは責任者)がいる」というのが、著者の結論である。「相手の立場に立つ、相手視点で見る、相手軸思考を持つ――これらは、相手のためを思って考えてみると、本当は誰でもできてしまう、実に簡単なことなのです」。しかし、「『相手の立場』に立って考えることはできても、『本気で相手の立場に立ったり』『相手の立場に立ち続ける』ことができていないのです」というのだ。

本書では、「本気で相手の立場に立ち」、競合店に負けない店づくりをしているさまざまな業種の店長たちが、実際に行っている習慣、秘訣、コツ、アイディア、工夫などが具体的に示されている。

例えば、「『あなたと一緒に働きたい』『あなたに会いたいから店に来た』と言われるのが目標」、「売上げを伸ばす店長は『ライバル店にも、過去の自分にも負けたくない』」、「売上げを伸ばす店長は『相手の気持ち』が瞬時にわかる」、「相手の立場に立ちきり、相手の立場に立ち続ける」、「お客様の人生の貴重な時間をいただいている」、「『自分をわかってくれる人』には、また会いたくなる」、「お客様を観察して情報を集めよう」といった具合である。

「お客様は『問題点の解決』に対してお金を払う」、「『お客様のためにこうありたい』というビジョンが大切」、「『相手がしてほしいことを相手にする』『相手がしてほしくないことは相手にはしない』」、「お客様が何を求めているのかを聴く習慣を持とう」、「相手の立場に立つことを継続して習慣化する」に至っては、どの業種の営業職にとっても最重要項目だろう。私の長い営業経験に照らしても、全く同感である。

著者は、「『相手軸に立つ』ことは『相手に迎合すること』ではない」と、警告も忘れない。

店長という立場にある場合は、個人レヴェルで上記の習慣を身に付けるだけでは十分でない。「観察傾聴行動を習慣化し、スタッフの『能力』と『やる気』を最大限に引き出す」、「『相手(スタッフ)軸』に立つことでチームワークがアップ」することの重要性を強調している。

この本を読み終えたら、年甲斐もなく、店長を経験したくなってしまった私がいるではないか。