砂漠をさまよう巨大な湖の謎・・・【山椒読書論(406)】
【amazon 『湖がきえた』 カスタマーレビュー 2014年2月1日】
山椒読書論(406)
かつて、中央アジアの広大な砂漠地帯に長径100kmほどもある巨大な湖が水を湛えていた。南北へ大きくさまよい動く「さまよえる湖」として知られたロプ・ノールである。
ロプ・ノールの謎を究明するために、40年間も情熱を燃やし続けたのが、スウェーデンの中央アジア探検家、スウェン・ヘディンである。彼は、ロプ・ノールは1600年を周期として南北に大きく移動する「さまよえる湖」だという大胆な仮説を発表する。
ロプ・ノールの謎に挑戦したのはヘディンだけではない。ヘディンのライヴァルともいうべきロシアの探検家、ニコライ・プルジェワルスキーとその弟子のピョートル・コズロフ、ヘディンの師で、「シルクロード」という言葉の生みの親でもあるフェルディナント・フォン・リヒトホーフェン、敦煌発掘でも有名なオーレル・スタイン、日本の青年僧・橘瑞超などの名も忘れるわけにはいかない。ロプ・ノールに関する論争は、尊敬するそれぞれの師の学説の正しさを証明しようという学問上の競い合いでもあったわけで、この経緯は『湖がきえた――ロプ・ノールの謎』(石井良治著、築地書館。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)に簡潔にまとめられている。