榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

鋭い追及で知られる望月衣塑子と森ゆうこが本音で語り合った・・・【山椒読書論(519)】

【amazon 『追及力』 カスタマーレビュー 2018年4月13日】 山椒読書論(519)

追及力――権力の暴走を食い止める』(望月衣塑子・森ゆうこ著、光文社新書)は、権力に対する鋭い追及で知られる東京新聞社会部記者・望月衣塑子と自由党参議院議員・森ゆうこの対談集である。

●森=陸山会事件(=自由党代表・小沢一郎が政治資金規正法違反罪の容疑に問われた事件)と同じで、司法と行政府、立法府が同じベクトルで結びつくと、権力の暴走は止まらなくなります。三権は互いに厳しくチェックし合うことが絶対に必要ですからね。伊藤さんの事件(=ジャーナリスト・伊藤詩織が山口敬之から準強姦の被害を受けたと訴えている事件)は、権力が不正に行使された疑惑のある典型的な問題ですから、しっかりと検証していかなければならないと思います。
●望月=事件であれ政治であれ、取材相手は絶対書かれたくないことがあれば徹底抗戦してきます。それを突破するのは思いの強さがないとできません。

●望月=日本ではメディアへの圧力も相当ですよ。日々圧力を受けているとは思っていませんが、報道に携わる人たちの間では、萩生田光一議員が自民党の筆頭副幹事長時代にメディアに出した文書は衝撃だったと言っていますね。・・・しかも、この文書が最初は公にされなくて、ネットに取り上げられてもメディアは報じなかったんです。あれほど権力が具体的に注文を付けてきているのに、抗議どころか反論さえしない。それぐらい衝撃を与えたようです。この文書を受けての萎縮感は大きかったと思います。テレビ朝日に至っては早河洋会長と安倍さんの関係ができてしまって、姜尚中さんとか浜矩子さんといった安倍批判をしている方々がことごとく外されるようになりました。20年以上『報道ステーション』を担当してきた名物女性プロデューサーが外されたり、コメンテーターだった朝日新聞の切れ味鋭い惠村順一郎論説委員を外したり・・・。本当にあからさまなことをするようになりました。テレ朝は朝日新聞系だから、そこをつぶしたかった安倍・菅さんにとっては、会長とつながったことが非常に大きかったようです。テレビは新聞以上に多くの人が見ているメディアですから、そこを圧力と人間関係で懐柔しようというやり口は、恐ろしいですね。

●森=これ(加計問題)は本質的な問題です。国民の暮らしが苦しくなる中で、一部の人たち、特に安倍総理のお友達だけが得をしている。国家の私物化、独裁政治の象徴です。まさに『安倍友』政治。だれが何と言っても最後まで私はやりますよっていう覚悟を決めないと、追及はできないよね。
●望月=加計学園の関係者によると、加計孝太郎理事長は結構ビッグマウスだとも聞きました。酔った席で、「安倍さんにはだいぶお金を使ってるんだ」と言っていたと聞きました。長年の友人で、そういう関係がもう当たり前になっていたら感覚が麻痺しちゃいますよね。安倍首相は「奢ったり奢られたり」と言っていましたけど、加計学園の関係者からは「たぶん安倍さんは二人で何かを食べたり飲んだり遊んだりしているときは、ほとんど加計さんに出してもらっていると思う」と言ってました。
●望月=本当に問題がないんだったら、それこそ資料を隠さないで全部出せばよかったんです。でも、本当に調べると安倍さんに行きついちゃう可能性が高いし、政府が条件をつけたことで、京産大が手を挙げるのを諦めざるを得ず、加計学園ありきで進んできたことがわかるから、その資料を内閣府も官邸も一切出そうとしない。・・・おそらく安倍さんはお世話になった加計さんに請われるままに、「早く獣医学部を作ってよ」と言って、設置する流れになったのではないかと推察します。実際にそんなところでしょう。みんながそういう流れだってわかっているけど、殿をかばうためにすべて「ない」と言っちゃうわけですよ。福田康夫元総理が、公文書管理法は資料をきちんと保存していくために作ったのに、現在の政権はそれを逆手にとって廃棄の根拠にしていると、痛烈に批判していましたよね。
●森=加計問題はひどすぎるよね。この嘘はこの国の議会制民主主義、法治主義、すべてをぶち壊すもの。だから、すごく罪が深いんですよ。「記録にない、記憶がない、確認できない」という繰り返しが、いまだに続いているということは、本当に深刻な問題だと思いますよ。それこそ福田康夫元総理が、「このままじゃ、日本は崩壊する」っていうくらい危機感を露わにおっしゃるほどですから。
●森=「これはちょっとまずいんじゃないの」と感じる人も少なからずいて、内閣府の人たちも、文科省の人たちも、そう思うからこそ、ああいう文書が出てきたわけですよ。

望月と森の迫力ある追及力に心からの敬意を表する。また、2018年4月10日に朝日新聞が報じた愛媛県職員の「首相案件」と記されている面会記録の存在と、翌日に、これは職員の備忘録と認めた愛媛県知事・中村時広の記者会見は、権力者に媚び諂う人間ばかりではないことを示している。まさに、天網恢恢疎にして漏らさず、である。