一時、幼心に戻り、滝平二郎の切り絵の世界に遊ぶことができた・・・【山椒読書論(600)】
図書館の一角に絵本が並べられており、その一冊を手に取ったら、英訳本であった。係員に聞くと、お母さんたちに人気だという。
『Heartbloom Hill』(斎藤隆介文、滝平二郎絵、アーサー・ビナード英訳、岩崎書店)は、花さき山の奥に住む山ンばに、10歳の「あや」が出会うところから始まる。
If someone helps another, out of kindness, straight from the heart, a flower grows. Aya, you made that red one yesterday.「この花は、ふもとの 村の にんげんが、やさしいことを ひとつすると ひとつ さく。あや、おまえの あしもとに さいている 赤い花、それは おまえが きのう さかせた 花だ」。
You wanted a new kimono too. Still, you kept desire inside. The petals of your flower are prettier than any kimono.「おまえは せつなかったべ。だども、この 赤い花が さいた。この 赤い花は、どんな 祭り着の 花もようよりも、きれいだべ。ここの 花は みんな こうして さく」。
Because every time Aya does something good, she thinks to herself, “Maybe I just made a new flower on Heartbloom Hill.” 再訪した時は山ンばには会わなかったし、あの花も見なかったし、花さき山も見つからなかった「けれども あやは、そのあと ときどき、『あっ! いま 花さき山で、おらの 花が さいてるな』って おもうことが あった」。
一時、幼心に戻り、滝平二郎の切り絵の世界に遊ぶことができた。