私たち老人を勇気づけてくれる作品・・・【山椒読書論(618)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月1日号】
山椒読書論(618)
コミックス『人間交差点(13)―― 一月の陽炎』(矢島正雄作、弘兼憲史画、小学館)に収められている「一月の陽炎」は、私たち老人を勇気づけてくれる作品である。作者の意図は違うところにあるのかもしれないが・・・。
「私(=小坂)はまだまだ(天国には)いかんぞ。私には使命がある。残されたラガーマンとして、どんな扱いを受けようと、選手としてファイトを出して、生をまっとうしなければならん使命がある、ハハハハ・・・」。
運動後、敬老会館の浴場で老人(=前田)と知り合い、行き場がないという老人を自宅に連れてきて、夕食を共にする。「陰気はいけません。楽しく暮らさなければいけない。今までずっと子供の為に、社会の為に、働き続けてきたんです。胸を張って堂々と生きるべきです」。「はあ・・・ただ、私は・・・あなたのように立派な生き方はしてきておりませんし・・・職も転々としてきましたし」。「そんなことは関係ない。長く生きてきたというだけで立派なことなんです。人間としてたいしたものなんです・・・」。そうだ! そのとおりだ!
前田は、小坂に誘われて、初めてのラグビーの練習を始めて1週間後、自殺してしまう。「どうして、心を躍らせずに、天の声を聞いてしまったんだ!!」。