榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

著者が危険を冒してたどり着いた全国の魅力溢れる野湯が満載の一冊・・・【山椒読書論(666)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年2月13日号】 山椒読書論(666)

命知らずの湯――半死半生でたどり着いた幻の秘湯たち』(瀬戸圭祐著、三才ブックス)では、著者が20年近くに亘り、危険を冒してたどり着いた全国津々浦々の野湯のうち、魅力溢れる64湯が紹介されている。

著者は、「野湯」をこう定義している。「湯が湧出しているが湯船が作れないところや、足湯しかできない場所も野湯とする考えもあるが、私個人としては、最低でも寝湯ができることが、野湯の条件だと考えている」。

「道なき道をたどり、崖や沢を攻略し、人知れず湧き続けている源泉に出会う。本書を読み、野湯へと近づいてゆく探訪の行程を、まるで目の前で起こっているかのように擬似体験してもらえれば幸いだ」。この著者の願いは、私においては十二分に達せられている。

私が勝手に選んだトップ5は、こうなった。
●秋田県S市・たつ子の湯「たどり着いた『たつ子の湯』。雪景色の中ではドラゴンアイのように美しい」。
●岩手県H市・A温泉木組みの湯「透き通ったライムグリーンは硫酸泉ならではの色だ」。
●宮城県O市・荒湯地獄三湯「『裏の湯』は適温で豊富な湯に恵まれているが、豪雨で壊されてしまうこともある」。
●鹿児島県K市・通し川の湯「コバルトブルーに輝くミルキーウェイに入湯し、すべてが癒される」。
●栃木県N市・カッタテ四湯「森の湯は、湯面が鏡のようになり、樹木と木漏れ日を映し出していた」。

自分は実際には行っていないのに、たどり着いた達成感と、自然の中での心地よい入湯感を味わえる一冊である。