動物たちの強かな生存・繁殖戦略に唖然・・・【山椒読書論(776)】
『悪のいきもの図鑑』(竹内久美子著、もじゃクッキー イラスト、平凡社)に登場する動物たちの強かな生存・繁殖戦略には唖然とさせられる。
「いきものの二大テーマは『生存』と『繁殖』。つまり、自分が生きのびることと、自分の遺伝子を残すことです。この『生存』と『繁殖』のため、それぞれの動物は驚くほどの知恵を発揮し、したたかな戦略を持っています」。
例えば――
●スズメ――分けやすいエサほど「チュン」が増える
「エサを独占するが捕食者対策は手薄となる、または、エサを分かちあい、捕食者対策を強化する。どちらを選ぶかはエサの状態次第だ。スズメは可愛い顔をしていながら、ずる賢い策士であった」。鳴き声の数にそんな背景があったとは!
●ヒト――男で浮気型が多く、女で尻軽型が少ないわけ
「男は一度射精したなら、次に子を得るチャンスは精子が回復したとき。成功するかどうかは別にしてチャンスはどんどん巡ってくる。ならば、数打ちゃ当たる方式でどんどん女にアプローチすべきだ。そのようなわけで、男は相手の質にはあまりこだわらず、どんどん浮気する傾向がある。他方、女はというと、一度妊娠したなら、出産、授乳、子育てと次々なすべきことが控えていて、次に子をつくることができるのは何年かの後だ。となれば、子づくりに慎重にならざるを得ない。子をなす際には、できるだけ質のよい男を選ばないと・・・そのようなわけで男と違い、女の場合にはどんな男でも受け入れるというわけにもいかないのである」。納得!
●ビワアンコウ――生殖器以外はメスの体のなかに消える
「ビワアンコウのオスはにおいを手掛かりにメスを探し、一度見つけたなら、そのお腹に自身の頭をぴったりとくっつけ、一生離れない。メスの腹から栄養をもらい、体も目も退化させる。1匹のメスにはこうしたオスが数匹寄生しており、メスの体長が20~35センチであるのに対し、オスの体長は1~7センチである。とはいえオスは、生殖器までも退化させることはない。唯一の仕事である繁殖のために、精巣は体の割には大きい」。オスは辛いよ!