ラジオから聞こえてきた瑞々しい感性の歌人は誰?・・・【山椒読書論(825)】
【読書の森 2025年1月1日号】
山椒読書論(825)
車のラジオから、瑞々しい感性の短歌と心温まる選評が聞こえてきた。こういう短歌を詠むのは誰なのか気になって調べたところ、梅内美華子という歌人と分かった。
そこで、早速、『梅内美華子集』(梅内美華子著、邑書林)を手にした次第である。
期待どおり、私好みの短歌にたくさん出会うことができた。
●男(お)のにおい女(め)のにおいかぎ分けながら夕べの電車に腋濡れてゆく
●汚すことのなき交じらいはなきものをヒメマス眠る湖(うみ)に月射す
●性欲を呼び覚ます暑さアユタヤの焦げし遺跡に手を触れてゆく
●性愛の痛みは背に残りいてくちなわなれば歩みがたきか
●東より朝は来れり君帰すことなき日々の雨の降る日も
●友よ静かなキスをしよう海原のとどろき耳につめこみながら
●うなぞこに巨大な貝となりて待ちあるときわれを呑みこむ君か
●重ねたる体の間に生るる音 象が啼いたと君がつぶやく
このところ、俳句や川柳の本を手にしてきたが、短歌もいいなあ。