榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

雛に口移しで餌を与えているスズメを飽かず眺める・・・【情熱的読書人間のないしょ話(15)】

【恋する♥読書部 2014年5月23日号】 情熱的読書人間のないしょ話(15)

我が家の庭の餌台には、毎日、シジュウカラ夫妻とスズメ夫妻が交互にやって来ます。5月下旬、バード・ウォッチングの弟子である女房が、突然声をかけてきました。「ねえ、見て! 餌台でスズメが雛に口移しで餌を与えているわよ」と。

何という偶然でしょう。私はその時、『スズメ――つかず・はなれず・二千年』(三上修著、岩波科学ライブラリー)を読んでいる最中だったのです。

「スズメの1年」(東京の場合)の箇所は、こう説明されています。「・・・4月下旬:卵を産みます→5月上旬:卵が孵化し、親鳥は、毎日せっせとヒナに餌やりです→5月下旬:子スズメたちは巣立ち後、町の公園などで過ごします。親鳥は、しばらく面倒をみた後、次の子育てに入ります。8月末ごろまでに、2回、多いものは3回の子育てを行います・・・」。また、「親鳥(右)から餌をもらう巣立ったばかりのヒナ(左)」の写真が掲載されており、「餌が欲しい時は、羽を震わすしぐさをする」というコメントが付されています。

「子育て中のスズメは、つがいで暮らしていますから群れません」とあるとおり、いつも、仲良く2羽揃って訪れます。バード・ウォッチャーの中には珍しい鳥を見つけることに熱心な人もいますが、私はスズメが大好きです。よく観察すると、仕種がかわいく、鳴き声も意外にかわいらしいことに気がつくでしょう。「平凡な私」は「平凡な鳥」に対して共感、仲間意識を覚えてしまうのです。

スイスのレマン湖畔の洒落たホテルに泊まり、湖に面したバルコニーで朝食をとった時、日本のスズメとはほんの少しばかり異なるスズメ(イエスズメ)が、我々人間を怖がるふうもなく、お相伴といった感じでテーブルのパン屑を啄んでいたことを、懐かしく思い出しました。「現在、スズメの仲間、つまりスズメ属に含まれる鳥は、世界に26種います。すべてアフリカからユーラシア大陸にかけて分布しており、一部の種はアメリカやオーストラリアにもいますが、これは人の手によって移入されたものです。26種の分布をざっとわけると、アフリカに16種、ヨーロッパに2種、アジアに6種、そしてヨーロッパからアジアの広い範囲に2種がいます。この広い範囲にいる2種が、スズメとイエスズメです」。