榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

雑木林の中の家に住みたいという夢は叶わなかったけど・・・【情熱的読書人間のないしょ話(35)】

【amazon 『雑木のある庭に暮らす』 カスタマーレビュー 2014年12月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(35)

「歩く(1日10,000歩)」という目標を達成するために、雨の日以外は散策を心がけています。緑豊かな小道や、住宅の玄関周りや垣根越しに見える庭の植栽に癒やされます。先日、市民農園の奥の草地まで足を延ばしたところ、我々に気づき、慌てたニホンノウサギが荒れ放題の鬱蒼とした森の茂みに駆け込んでいきました。

雑木のある庭に暮らす――身近に自然を感じるゆたかな住まい25軒』(小澤典代著、成文堂新光社)は、雑木林や雑木のある庭が好きな私には堪らない本です。

「庭が教えてくれたこと 人生を豊かにするヒントを 植物の生長に学ぶ幸せ――増田正さん・由美子さんの庭」。「大人になってから夢中になれるものを新たに見つけられる。それは、とても幸せなことなんじゃないかと思います。・・・増田正さんは、人生も折り返し地点を迎えようとしていた45歳の頃、戸建ての家を購入したことをきっかけに庭づくりの魅力に惹きつけられた。・・・仕事とは違うフィールドで、人生についての新たな学びの場を持つこと。それはきっと、本物の大人の贅沢だと思います」。同感です。

「庭に丹精を込めるのは さまざまな気づきに繋がるから それは人に安らぎも与える――松尾優美子さんの庭」。「通りから見た心安らぐ松尾さんの庭、誰もが暫し足を止めて眺めていく」。「初めて歩く道で、ふと足を止めてしまう光景に出会うことがあります。・・・フェンスなどで遮ることなく路地に面して開かれた庭は、雑木と下草が連なり、カーブを描く小路があって、建物とのバランスが何とも粋なのです」。散策中に思いがけない素敵な庭に出会うと、嬉しくなってしまいます。

「小さなスペースでも 森にいるような癒しを得る たくさんの雑木が出迎える庭――小林恵さんの庭」。「たくさんの雑木で守られているような小林さんの家」。「犬や猫といった身近な動物に癒される人がたくさんいるように、花や草木に癒される人も大勢います。・・・小さなスペースでも、森にいる気分が味わえることを実証しているのです。・・・個人の庭が風景として、その地域に暮らす人々のサプライズになり、同時に癒しになることも多くなるのではないでしょうか」。雑木林の中の家に住みたい、それが無理なら庭を雑木林のようにしたいという私の夢は遂に叶えられなかったので、こういう庭は羨ましい限りです。

「ピュアな心を反映する ファンタジーが漂う庭には やさしい気持ちが宿っている――川野慎二さんの庭」。「アーチやフェンスといったガーデングッズもすべて川野さんの手によるもの。それらが置かれた庭にいると、何かワクワクする物語のなかに迷い込んだような気分になるのです」。

「小さな心をやさしく育む 小さな緑のスペースは 大事なことを教えてくれる――中村愛加さんの庭」。「中村愛加さんは、2年ほど前に都心に戸建ての家を建てました。スペース的に充分な余裕があるわけではありませんでしたが、緑の空間で(玄関の)アプローチをつくることを諦めませんでした」。玄関周りの小さなスペースに緑の空間を上手に設えている家を見かけると、思わず見惚れてしまいます。

豊富なカラー写真が、実際に庭巡りをしているかのような気分にさせてくれる一冊です。