榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

時には、自分とは異質な世界を覗いてみよう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(127)】

【amazon 『孤独な旅人』 カスタマーレビュー 2015年7月24日】 情熱的読書人間のないしょ話(127)

散策中に、田んぼの溜め池でひっそりと咲いているスイレンを見つけました。この辺りには、クサガメが棲息しています。因みに、本日の歩数は10,856でした。

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閑話休題、『孤独な旅人』(ジャック・ケルアック著、中上哲夫訳、河出文庫)には8つの短篇が収められていますが、あの若者の放縦な放浪生活を活写した『オン・ザ・ロード』(路上)(ジャック・ケルアック著、青山南訳、河出文庫)のケルアックに再会することができました。

「モーモー鳴く悲しい牝牛たち、屠場のなかでは陰気で不愉快で敵意のこもった表情の小柄なメキシコ人たちやカリフォルニア人たちといつでも出かけられるおんぼろ車とが血まみれの作業場にひしめいていた――そしてついにぼくはある日曜日そこをおさらばした、アーマー&スウィフトの敷地よ、そしてぼくはサンフランシスコ湾は60フィートの彼方だとわかったが一度もそのことに気づかなかったのだ、だけど湿った鉄道の構内よ、糞だらけの地面よ、最悪の鼠の天国よ、もっとも構内の向こうには海が青々と漣を立て朝のうちは海はオークランドや道路の向こうのアラメーダまで平らな鏡のすばらしい見せ物を見せていたのだ。――そして強い風が吹く日曜日の朝ぼくは老朽化し使われなくなった屠場のトタン板の壁のぶつぶついう声を聞いた。敷地内の糞と非番の夜に普通列車に轢き殺された鼠の死骸ともしかしたらぼくが防御のために拾い集めた上着のポケットいっぱいの石をぶつけたかもしれない何匹かの鼠たち、激しく風の吹く日に非常に痛ましい土埃のなかに横たわっているほとんど神秘的に殺された鼠たち、そんな日には文明の希望の飛行機が着陸の場所を求めて悪臭を放つ沼地や汚いくだらない平地を横切って空中を飛んだ」。

ケルアックの世界は私のそれとは正反対ですが、時には、こういう異質な世界を覗くのも刺激があっていいものです。