榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

最高のビジネスパースン、ジャック・ウェルチの具体的なノウハウが凝縮・・・【MRのための読書論(131)】

【ミクスOnline 2016年11月16日号】 MRのための読書論(131)

最高のビジネスパースン

ビジネスで成功するには、理論と行動が必須であるが、それだけでは足りない。理論と行動によって実際に成果を上げること、すなわち結果責任が問われる。この意味で、20年に亘り、ゼネラルエレクトリックのCEOとして見事な業績を上げ続け、その理論と行動の正しさを証明したジャック・ウェルチの言葉には耳を傾ける価値があるだろう。『ジャック・ウェルチの「リアルライフMBA」――ビジネスで勝ち残るための13の教え』(ジャック・ウェルチ、スージー・ウェルチ著、斎藤聖美訳、日本経済新聞出版社)には、ビジネスの現場で明日から私たちが実際に活用できる戦略的な考え方と具体的なノウハウが凝縮している。

「何もせずに手をこまぬいていることはリスクを意味する。もっと正確に言うなら、学びをやめることはリスクを意味する。積極的に学ぶと、君の組織、チーム、そして君のキャリアにどのような変化が起きるか、見てごらん。ワクワクした気持ち、成長、成功。そういった変化が出てくることだろう」。

一貫性

ビジネスには一貫性が重要だと強調している。ミッション、行動、結果の一貫性、すなわち、この3つがぶれてはいけないのだ。ミッションが組織の目標なら、行動はそこに辿り着く手段、交通手段だ。

組織から、やる必要のない、つまらない仕事を取り除き、一貫性を維持するには、リーダーシップが欠かせない。あっと言わせるようなチームを築くための具体的な戦術は、次の5つである。①部下の心の奥底に入り込む。②自分はチーフ・ミーニング・オフィサー(仕事に意義を見出す最高責任者)だと考える。リーダーは、仲間に目的を与えるために存在するといっても過言ではない。「『私たちはここに行くんだ。その理由はこれ。そこにたどりつく方法はこれ。そこで君はこういう役割を果たす。これが君の得るものだ』と、たゆまず情熱をこめて説明する」。③部下の仕事の障害を取り除く。④「気前のよい遺伝子」を喜んで見せる。「(最高のリーダーの明快な特徴は、部下を)昇進させるのが大好きだという点だ。社員が成長して昇進するのを見て感激する。お金、責任ある仕事、人前で称賛するなど、あらゆる手を使って、祝ってあげる」。⑤仕事が楽しくなるような環境を作り上げる。

マーケティング

著者の考えるマーケティングの極意は、至極簡潔である。他社ができないことを顧客に提供せよというのだ。「専門的知識、アドバイス。心から顧客に関心を持ち、洞察力を駆使する。そのとおり、まさにパートナーシップだ」。

盗人対策

著者の「盗人」対策が興味深い。「君の時間とエネルギーを盗む社員、成績が悪い社員、衝突を引き起こす常習犯のことだ。こういった生産性を奪う輩にはかなり厳しい態度を取るといっても驚かないだろう。だが、組織を闊歩する『盗人』の中でも、もっとも危険なのはどんな盗人かを言ったら驚くかもしれない。それは感情――不安という感情だ。職を失う不安、業界が破綻する不安、景気低迷の不安。リーダーとして、社員がつねに不安と背中合わせで生活していることを認識するのは君の仕事だ。そして、それに正面から対峙するのも君の仕事だ」。「何を本当に不安に考える必要があるのか、何が噂で何が憶測なのかを社員に話す必要がある。そうしなければ、彼らの想像が膨らみ、生産的な仕事ができなくなることは間違いないからだ」。「私たちが恐れるべきものは、恐れそのものだ。リーダーとして、君の仕事は、よい時も悪い時も、絶え間なく真実を話して不安を消すことだ」。

キャリア・マネジメント

上司の期待を上回る成果を上げる。難しい任務を率先して引き受ける。賢い考え方を示し、強く意見を打ち出して、ファンを作る。全ての人を自分のメンターと考え、彼らの頭脳を自分の頭の中に取り込む。周りを勇気づける態度をとる。新しいテクノロジーの知識を若者任せにせず、身に付ける――早速、明日からこれらに取り組もうではないか。