イタリア各地の小工房の作品たちに心奪われて・・・【情熱的読書人間のないしょ話(152)】
人から注目されなくても、密やかにしっかり咲いているヒルガオになぜか心惹かれます。自己主張の多い私と正反対の生き方の植物だからでしょうか(笑)。ヒルガオより一回り小さいコヒルガオも頑張っています。
閑話休題、『イタリアの小さな工房めぐり』(大矢麻里著、新潮社・とんぼの本)は、自分の世界をしっかり構築しているイタリアの小工房の職人たちにスポットを当てた探訪記です。素敵なカラー写真と文章で構成されています。
「実際に20を超える工房をめぐってみて、彼らに共通していたのは、時流になびかず、自らの仕事スタイルを貫く潔い姿勢である。その頑なさは、歳月をかけて人知れず努力を重ね、高度な技術を身につけた者だけが持つ自信に裏付ちされたものである。完成した作品には、合理性や機能だけを突き詰めたものにはない、永続的な輝きが宿っている。使い捨てを好まず、手入れをしながら大切に使い続けるイタリア人の美意識が映し込まれているのだ。・・・印象的だったのは、職人たちの温かく率直な人柄だった。彼らはカメラの前で順風満帆ばかりとはいえなかった自らの人生を振り返り、今日に続く道を拓くきっかけとなった人や出来事、そして自身の家族の歴史までも情熱的に語ってくれた」。
とりわけ印象的なのは、トスカーナ州シエナ県ピエンツァの鍛冶工房です。「中世から好まれた『竜』をモチーフにした燭台。今にも火を吹きそうな迫力が伝わってくる。高さはおよそ70センチ」。あまり物欲のない私も、これは欲しくなってしまいました。
ラツィオ州ヴィテルボの製本工房も興味深い工房です。「ルチア・マリア&ハンス・ライナー夫妻の手により甦った幸せな本たち。装丁にはフィレンツェの牛革、北アフリカのヤギ革などが用いられている。・・・カルタ・ヴァレーゼ(茶色)やカルタ・フィオレンティーナ(赤色)など各地の伝統的な紙と革の組み合せも美しい」。
トスカーナ州ピストイア県ペッシャの籠編み工房も魅力的です。「柳やオリーブの枝を用いたトスカーナ地方の典型的な籠編み細工。同じ材質でも表皮の有無や乾燥具合によって風合いが異なる」。