性風俗業界で働く現役女子大生が増えている理由とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(253)】
我が家の庭には真紅の実のマンリョウしかありませんが、散策中に、実が白いシロミノマンリョウ、マンリョウより少し小さな赤い実を付けたセンリョウを見つけました。昼食で立ち寄った店の小さな庭が、秋の深まりを感じさせます。隣家の、役割を終えたメジロの巣が風に揺れています。因みに、本日の歩数は10,459でした。
閑話休題、『女子大生風俗嬢――若者貧困大国・日本のリアル』(中村淳彦著、朝日新書)を読んで、愕然としました。
「女子大生風俗嬢は昔からいたけど、特に増えたのは2008年の世界不況以降だろうね。あの時期を境にして、風俗店はお客さんが激減して、経営が本当に厳しくなった。求人サイトからは働きたいって女の子たちがたくさんくる。もう、明らかに供給過剰になっている。そうなるとこっちが女の子の採用を選べる立場になる。いまや風俗は誰でもできる職業じゃなくて、希望者の半分くらいは断られているかな。昔と違って風俗嬢になるために競争が起こっているから、付加価値のある有名大学の女子大生は採用されやすい。だから単価の高いAV女優とか、高級ソープとか高級デリ(デリバリーヘルス)は、有名大学の現役女子大生が本当に増えたんじゃないかな。でもね、ほとんどの風俗嬢は、そんな稼げてないよ。収入は15年前の半分くらい。それと、今の女の子たちは昔みたいに遊ぶためじゃなくて、生活するため、学費を払うために、自分の意志でカラダを売っている」。こう語るのは、都内と横浜市で20店舗以上のデリヘルを運営する経営者です。
なぜ、こういうことになってしまったのでしょうか。「経済的に充足していれば、大多数の女性はわざわざ裸になって不特定多数の男性に性的サービスを提供するリスクの高い仕事を始めようとは思わない。学業という本業があり、年々過熱する就職活動が控えている現役大学生ならばなおさらその傾向は顕著といえる」と、著者は述べています。
それなのに、なぜ風俗で働く現役女子大生が多いのか、この謎に迫ろうと、著者の取材が敢行されます。その生々しい記録が本書の大部分を占めています。
精力的な取材の結果、浮かび上がってきたのは、男女を問わず、現在の大学生が置かれている蟻地獄のような惨状です。「同一企業で定年まで雇用される日本型雇用の崩壊から始まった親の世帯収入減と、高度教育予算の削減による学費高騰が発端となって、日本育英会が姿を変えた日本学生支援機構による『奨学金』という貧困ビジネスが大流行していた。政策として事実上『推奨』したことにより、若者が借金をして大学進学することが一般化して、学生という正業は二の次でアルバイト漬けになる。高単価な夜の世界や性風俗で働く、膨らむ借金と返済への不安で悩み続けるなど、高単価な夜の世界や性風俗で働く、膨らむ借金と返済への不安で悩み続けるなど、かつての大学生には考えられない事態が常態化していた。さらに安い労働力が欲しいブラック企業が大学生の貧困につけ込み、違法労働を強いて酷使するなど、負の連鎖は広がり続けている」。
「学生の過半数が『奨学金』という自己破産相当の借金を背負う大学や専門学校は、もはや経済的貧困を抱える社会的弱者の集まりであり、結果として(弱者間で)犯罪的な奪い合いが始まるのは当然のことなのだ。貧しいことは男子学生も女子学生も変わらない。女子学生は『簡単に価値が認められる肉体』を持っているが、なにも持たない男子大学生に『奨学金』のような残酷な制度を浸透させれば、犯罪的な利益追求が勃発するのはいわば当然である。もはや大学は、なにが起こるかわからない危険な場所になっているといえる。文部科学省や財務省が政策として取り入れた『奨学金』制度は、続々と女子大生を性風俗業界に送り、男子学生たちを犯罪行為に走らせ、ブラック企業を増長させて、最高学府である大学の治安を悪化させるという、とんでもない副作用を巻き起こしてしまった」とまで、言い切っています。
このような状況を改善する方策はないのでしょうか。「給付奨学金の拡充」、「返済猶予期間の延長」などの制度の改善が提案されていますが、根本的な解決に繋がるのでしょうか。
最後に、著者は若者にこうアドヴァイスしています。「親の世帯収入が低く、(有利子の借金をして進学するという)投資の回収に不安のある若者たちは、勇気を持って『通学制の大学に進学しない』という選択をすることだ」。「お金はないけど勉強したい者は、通学過程の1割程度の学費で済む通信制で十分ではないか」。
「裸になって性的サービスを提供して高単価な報酬を得て『奨学金』を回避している女子学生の方が、『奨学金』に依存する一般学生より、充実した学生生活を送り、将来が明るく、人生が有利に進んでいく可能性が高いことは事実である」。こう言われても、厳しい現実は分かったものの、性風俗で働くほうが「将来が明るく、人生が有利に進んでいく」とは、私にはどうしても思われません。何か、根本的かつ画期的な改善策を編み出せないものでしょうか。