「ずるさ」ではなく「したたかさ」を磨け・・・【MRのための読書論(205)】
大差
『Deep Skill――人と組織を巧みに動かす深くてさりげない「21の技術」』(石川明著、ダイヤモンド社)を読んで学んだ人間と読まないで済ました人間とでは、組織におけるその後の人生に大きな差が生じてしまうことだろう。48年に亘り組織で波瀾万丈の人生を送ってきた私が言うのだから間違いない。
技術
著者が自らの経験を通じて会得した組織力学上の技術はいずれも説得力があるが、とりわけ重要なのは下記の10項目である。
●「ずるさ」ではなく「したたかさ」を磨く。「『信頼資産』を貯めたうえで、『したたかな戦略』をもつ」。
●上役を立てながら「当事者」に仕立て上げる。「舞台に上がる『俳優』ではなく、筋書きをつくる『脚本家』を目指せ」。
●無闇に「波風」を立てない。「『本当に仕事ができる人』は、不要な『波風』が立たないように、あらかじめ関係者と丁寧な合意形成を図って、スムーズにコトを進める『ディープ・スキル』に長けています」。しかし、「『波風』を立てるべきときには、しっかりと立てることが大切。あえて『角』の立った議論をぶち上げることで、社内の議論を深めることに大きな意味があるからです」。
●圧倒的な営業成績を残すことによって、「僕はここにいるぞ」と声を張り上げる。「圧倒的な『量』をこなすことで、自然と『仕事の質』は高まっていくのです。そして、『仕事の質』が高まれば、『結果』は必ずついてきます」。「若いうちは『与えられた場所』で『実績』を出すことにとにかく集中すればいいのですが、『仕事』や『キャリア』を選択することができるようになってからは、『自分の存在』をアピールし、『自分の価値』を最大化するために、『何を武器に働くか?』『何の専門性を磨くか?』などの選択に工夫を加え、周囲の中で際立つ『特徴』をつくり出すことを強く意識する必要があるのです」。
●「どんな人が」「どんな場面で」「どんな『不』を感じているか」に思いを馳せ、「どうすれば、その『不』を解消できるか」を考え抜く。「不平、不満、不安、不幸、不便、不良、不遇、不快、不足、不自由、不平等など、『不』のつく言葉はたくさんありますが、製品やサービスを提供することを通して、これらの『不』を解消することこそがビジネスの『本質』なのです」。
●他者の「脳」を借りて考える。「プライドを捨てて『人に頼る』ことで、『強い力』が手に入る」。
●本当に仕事のできる人は、「話術」よりも「観察力」を磨いている。「どの話題に触れたときに、相手は強い反応を示すのか? どのような『相槌』を打てば、相手は話しやすいのか? 相手が伝えたいことは何なのか? そうしたことに配慮しながら、『相手が話したいこと』を引き出すために、言葉を紡ぎ出す。それこそが、本当の意味で上手な『話し方』なのです」。
●「協力的な人間関係」を網の目のように張り巡らせる。「そのような『人間関係』を組織内にたくさんつくることで、会社の中で『大きな仕事』を成し遂げるパワーが備わってくるのです」。
●まず、自分の「機嫌」をマネジメントする。「マネージャーとして『求心力』を発揮するためには、なにはさておき『機嫌よく』いることが大切なのです」。
●「好き嫌い」に左右されず、「自分の感情」をコントロールする。「『好き嫌い』の感情に捉われるのではなく、『目的合理性』に徹する――いい意味で『ビジネスライク』に付き合う――ことによって、結果として、それなりにポジティブな人間関係が育まれていくのです」。
若い時に本書に出会っていたら、もっと充実した人生が送れていただろうにと悔しがる私。
戻る | 「MRのための読書論」一覧 | トップページ