愛していながら、あの青年を愛してはいけないと苦悩する伯爵夫人・・・【情熱的読書人間のないしょ話(375)】
千葉・流山の大堀川とその防災調整池周辺では、ウグイス、キジ、ウシガエルなどの鳴き声がにぎやかです。ウグイスが囀っている木の下で30分以上も頑張ったのですが、その姿をカメラに収めることはできませんでした。そこで、私が愛用している『日本の野鳥図鑑』(松田道生監修、ナツメ社)からウグイスの写真を借用しました。写真のように、ウグイスは灰色がかった緑褐色という地味な色合いをしています。鶯色というと、メジロの美しい黄緑色を連想する人も多いようですね。湧き水が滲み出している所で、ツバメのカップルが水を飲んでいます。ダイサギがグワ、グワと大きな声で鳴いています。川では40cmほどのコイがたくさん泳いでいます。シオカラトンボの雌と未成熟な雄は黄褐色をしています。明るい紫色の花を付けたムラサキツメクサ(アカツメクサ)が群生しています。ユウゲショウ(アカバナユウゲショウ)がかわいらしい桃色の花を咲かせています。因みに、本日の歩数は11,282でした。
閑話休題、書斎の書棚から取り出してきた『ドルジェル伯の舞踏会』(レイモン・ラディゲ著、生島遼一訳、新潮文庫)を51年ぶりに読み返しました。本作品を校正中に腸チフスに罹り、20歳で夭折したレイモン・ラディゲの恋愛心理小説です。
ヒロインのマオ・ドルジェルは名門伯爵家の若き夫人で、夫を愛しています。ところが、ある日、出会った年下の青年、20歳のフランソワ・ド・セリューズにときめきを覚えます。その後、ますますフランソワに惹かれていく自分に驚いた彼女は、自分は人妻で夫を愛しているのだから、これが恋のはずはないと、自分を必死に納得させようと苦悩します。
フランソワに対する心の昂まりに追い詰められた彼女は、遂に、フランソワの母に手紙を書き、その中で自分の気持ちを打ち明け、フランソワがもう自分と会わないように取り計らってほしいと頼み込みます。その時、マオはフランソワの母から、息子はあなたを愛していると伝えられるのです。自分がフランソワに愛されているとは夢にも思っていなかったマオは心底驚きます。喜びに貫かれたのは一瞬のことで、悩みが一層深まります。
一方、友人の妻ということで、友人のドルジェル伯に後ろめたさを感じながらも、マオへの思いを募らせていたフランソワは、母からマオの手紙を見せられ、歓喜に打ち震えます。
このままではいけないと、マオは夫に自分の気持ちを告白してしまいます。
この後、マオ、フランソワ、マオの夫――の関係は、どうなるのでしょう。
マオとフランソワの間には頬への接吻を除いては肉体的な接触がなく、両者の心理状態が刻々と精密に描き出されていく本作品を再読して、高校時代に同級生に憧れを抱き、恋することの幸福と苦悩を味わったことを、懐かしく思い出しました。