日本・世界の最新情勢の核心に鋭く迫る目利き・大前研一の直言の数々・・・【情熱的読書人間のないしょ話(428)】
庭を掃いていた女房が、「いいもの見つけたわよ」と駆け込んできました。塵取りに載っているのは、ナツツバキで見つけたという、光沢のある鮮やかな緑色のコガネムシでした。我が家のアメリカノウゼンカズラとナツツバキは連日、たくさんの花を落とすので、女房は掃除が大変です。隣家の薄紫色のムクゲが涼しげです。因みに、本日の歩数は10,217でした。
閑話休題、『ニュースで学べない日本経済』(大前研一著、KADOKAWA)は、日本を含む世界の最新情勢を知るのに恰好の一冊です。大局観と先見性を兼ね備えた目利きである著者の歯に衣着せぬ直言は、核心を鋭く衝いています。
「今求められる教養は『本質を見抜く力』」、「危機に直面した時、自分の考えで対応できるか」、「日本の政府とメディアは真実を伝えない」、「『日経』を読むと世界が見えなくなる」――などなど、刺激的な指摘が満載です。
とりわけ、「日本社会の『心理』を見誤ったアベノミクス」は、痛烈です。「(アベノミクスは)一つとして成果を出しているものはありません。この国の将来に対して企業も投資をしたくなるような環境ではないのです。これが、アベノミクスの実態です。今の日本社会の心理をまったく無視した20世紀型の金利とマネーサプライで経済をコントロールしよう、という考え方がまったく機能していない、ということです」。「成熟期のマクロ経済に無知な経済政策では効果が出ない、というのは当たり前のことです」。「これが国家の危機でなくして何でしょうか。しかも100年も古い経済政策を使ってグシャグシャにしてしまったというのがアベノミクスです」。
さらに、恐ろしいことが記されています。「(財務省の)ハイパーインフレになればいいという考えです。ハイパーインフレになってしまえば、誰も責任は問われません。いくら財務省が増税をして8%を10%にしてほしいと言っても、軽減税率だとか何とか言って、政治家は選挙のことしか考えていない。財務省はいい加減頭にきて、だったらいっそのことハイパーインフレになってくれればいい、そう考えているのです。次の選挙も基本的には安倍・菅&公明党が圧勝、ということになると思いますが、油断してはいけません。財務省は『こうなったらハイパーインフレで1300兆円の借金をチャラにしてしまおう。そうなったら楽だよね』と考えています。もしそんなことになったら、皆さんの1700兆円を超える個人資産もチャラになる、つまり紙くず同然になるということです。そうしたシナリオ通りになる可能性があり得るということも覚悟しておいたほうがいいでしょう」。あな恐ろしや、恐ろしや。
悲観論で終わらないところが、大前流です。「日本がすべき、たった一つのこと」で、「『人・モノ・カネ』から『人・人・人』の時代へ」の転換が必要だと強調しています。21世紀の経営資源は、人・人・人、具体的には、考えられる人・方向性を示せる人・構想を練れる人だというのです。