私の好きなジブリ作品の裏話にワクワク・・・【情熱的読書人間のないしょ話(500)】
散策中に、ツマグロヒョウモンの雄、ヒメアカタテハをカメラに収めました。ツクツクボウシたちは我が家を気に入っているらしく、30分ぐらい同じ場所に止まったまま鳴いたり休んだりしているのもいます。その彼を正面から、左側から、右側から撮影しました。因みに、本日の歩数は10,764でした。
閑話休題、『ジブリの仲間たち』(鈴木敏夫著、新潮新書)には、ジブリの歴代のアニメーション映画の裏話が満載です。
私の好きな『となりのトトロ』について。「できあがってきた(糸井重里さんの)コピーは想像以上にすばらしかった。『となりのトトロ』が『このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。』。プロの技というものを感じました。ただ、じつは『トトロ』の最初のコピーは、『このへんないきものは、もう日本にいないのです。たぶん。』だったんです。でも、宮さん(宮崎駿)が『いる』と言うので、いまの形になりました」。
私の好きな『魔女の宅急便』について。「(キキが下宿先のパン屋で店番をしている)絵柄を見せたりするうちに、糸井さんのイメージも固まっていったようで、最後の最後に『おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。』というコピーが出てきた。ポスターのビジュアルにもしっくりくるし、ユーミン(荒井由美)の挿入歌『ルージュの伝言』『やさしさに包まれたなら』の雰囲気にも合っている。僕としては、非常にいいコピーだと思いました。僕は編集者としての経験も踏まえて、タイトル、コピー、ビジュアルは三位一体じゃなきゃいけないと思っているんですけど、『魔女の宅急便』の第一弾ポスターでは、それが非常にうまくいったと思っています」。
『もののけ姫』について。「(旗印になるキャッチコピーを)決めるのはいつも難しい。とくに『もののけ』のときは難産でした。糸井さんとは数え切れないほどファクスのやりとりをしました。僕は、宣伝の方針を考えるとき、何度も絵コンテを読み直します。そこで気になった絵と言葉をノートに引き写していくんですが、その中から糸井さんがコピーを作るときの参考になりそうなものを送っていく。それをもとに糸井さんが考えくれたコピーを宮さんと検討し、フィードバックを糸井さんに伝える。それを延々と繰り返した挙げ句、出てきたのが、『生きろ。』という非常にシンプルなコピーでした。僕はこれしかないと思った。バブルの崩壊、阪神淡路大震災、オウム事件・・・。世の中がどんよりとした不安に覆われ、みんなどこか神経症的になっていた時代です。誰かが『生きろ。』と言い切らなきゃいけない。それぐらい強い言葉が必要だと、僕は思ったんです」。「じつは、『生きろ。』というコピーの評判も、最初は悪かったんです。『こんな哲学的なコピーじゃ、子どもには分からない。女性も来ないよ』と言われました。でも、僕は『これで行くしかない』と思っていました。映画にも哲学的なメッセージが必要な時代だと考えていたからです」。
『千と千尋の神隠し』について。「僕が見たところ、どうもカオナシというのは、人間の心の底にある闇、心理学でいうところの『無意識』を象徴している。そいつがあらゆる欲望を飲み込みながら暴走する。千尋はそれを鎮め、海の上を走る列車に乗って銭婆に会いに行く。そして、戦うことなく名前を取り戻します。不思議なお話ですよね。物語の類型からはかけ離れています。でも、僕はこれこそが現代の映画だと思った」。「この作品の当初のメインコピーは、糸井重里さんが作ってくれた『トンネルのむこうは、不思議な町でした。』というものです。ところが、途中からカオナシが前面に出てきたことで、このコピーだけではテーマを表現しきれなくなってしまった。・・・そこで、(市川南さんと)二人でああでもない、こうでもないと考える中で、彼がふいに言ったのが、『<生きる力>を呼び醒ませ!』というコピーだった。そのときの僕は『なんて恥ずかしい言葉だろう』と思ったんです。でも、クールな彼が珍しく熱くなって出してきた言葉です。それに懸けてみることにしました」。
著者の「宣伝とは仲間を増やすこと」、「ヒットの理由というと、とかく宣伝戦略やお金の話になりがちですけど、根本にあるのは、やっぱり個人の情熱だと思います」という言葉が胸に沁みます。
『となりのトトロ』と『魔女の宅急便』は、もう何度も見ていますが、本書を読んだら、『もののけ姫』と『千と千尋の神隠し』をもう一度見たくなってしまいました。