懐かしい1970年代の地方の香りが漂ってくるモノクロ写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(501)】
【amazon 『写真集 流れ雲旅』 カスタマーレビュー 2016年8月25日】
情熱的読書人間のないしょ話(501)
W・ユージン・スミスの「楽園への歩み」というモノクロ写真は、未来への希望を感じさせてくれます。沖縄戦取材中に負傷し自宅で療養していたスミスが、1946年に、裏庭で遊ぶ自身の子供たちを写した作品です。
閑話休題、『写真集 流れ雲旅』(北井一夫著、ワイズ出版)のモノクロ写真からは、懐かしい1970年の地方の香りが漂ってきます。
青森・下北半島を一緒に旅したつげ義春が列車内でのんびりと煙草を吸っている写真など、あちこちの場面につげが登場します。「私たちと会話した人は皆つげさんをカメラマンだと思っていた。私はカメラ一台しか持たないが、つげさんはいつも首と肩に二台ぶら下げて、背が高いからだと思うのだが」。
つげの妻で舞台女優の藤原マキも登場しています。
山形・奥羽本線の座席に何か思い詰めた表情で座っている若い女性の運命が気になります。
秋田・泥湯温泉の小さな温泉に浸かっている男女の年寄りたちは、ほのぼのとした雰囲気に包まれています。福島・二岐温泉の小さな露天風呂の写真も風情があります。
福島・会津檜枝岐、大分・国東半島、福岡・篠栗などの風景の写真には、鄙びた田舎の魅力が凝縮しています。
心が癒やされる写真集です。